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美術室前にて




 ◇ ◇ ◇
   
 

 翌日の朝SHR後。

 一階の職員室、前橋の机前にて。
 
 
 
「あー…田山、表情からして察しはつくが一応聞くぞ。この生徒等に見覚えは? お前等もこの生徒に見覚えは?」
 
 
 
 おいおいおい、嘘だろジョニー。冗談だと言ってくれマックス。ジョークだと笑いかけておくれボブ。

 俺はただ単に反省文を提出するべく前橋のところに来たんだよ。
 
 昨日の一件は反省文で水に流そうと自分なりに、身に覚えもない事件の反省文を一時間掛けて仕上げてきたんだよ。半枚にしかならなかったけど!
 事情を知っているヨウや利二(昨日電話で話したんだ)に書き上げた反省文を見せたら、「馬鹿だろ」なんでやってもいない事件の反省文をガチで書いてるんだよって呆れられたけど、俺なりにこの事件はこれで終わり思考で頑張ってきたんだよ。

 んでもってこれまた頑張って職員室に来たんだよ。
 昨日変な帰り方したから、なんかメンドクサイこと言われるんじゃないかなーって、ビクビクとしながら前橋の下を訪れたんだよ。
 

 そしたらどうだい?


 見知らぬ新入生二人がそいつ等の担任であろう教師と一緒に、前橋と会話してて…、ヤーな予感がして歩み寄っていたら、前橋が俺を見てふっかく溜息。三度ふっかく溜息をついて、こめかみに手を添えた。
 で、冒頭の質問を飛ばしてきた。お互いに見覚えはあるか? って。

 なーんかデジャヴを感じつつ、ポカーンとした顔でこっちを見ている新入生(男子)二人組と、引き攣り笑いを浮かべる俺はお互いに同じ結論を出した。存じ上げません。
 
 
 途端に前橋、「また面倒事を」胃が痛くなってきたと呻き声を上げた。 


「説明から先にすると、昨日の放課後、この生徒等がお前に恐喝未遂を起こしたらしい」

「…じゃ、じゃあ…、俺、また疑いが掛かって…」

「昨日の今日でこれだもんなぁーっ」
 
 
 勘弁してくれと嘆く前橋だけど、俺こそ勘弁してくれだよ!
 な、なんで昨日の今日でっ、お、俺が必死こいて反省文を書いた意味って…っ、これ以上面倒事を起こしたくないし、一件の事件は反省文で終わらせるって心に決めた矢先のこ・れ!


 あ、あんまりじゃんかよー!

 マジ(偽)田山圭太さんナニやってるんだよ!


 勝手に人の名前を使った挙句、散々他の方にご迷惑を掛けやがってっ。
 そんなことしてみろっ、追々“本物の田山圭太”が泣きを見るんだぞ! 現在進行形で見てるんだぞ! “本物の田山圭太”に謝れっ、ドチクショウ。身に覚えのない恨みつらみ迷惑面倒を振り撒いたら“本物の田山圭太”がガチ泣きするんだぞ! ……っ、泣いていいか? マジで。
 

 心中で涙ぐむ俺に対し、被害者の新入生二人は情報を提供してくれた。

 
 こんなひょい体躯の地味先輩じゃなくて(その言い方めっちゃ失礼だ!)、もっと派手ハデな不良の分類に属する輩達、三人組だったと。「また不良か」前橋は顎に指を絡めて意味深に俺に視線を投げてきた。
 目は訴えている、今度こそヨウ達を呼び出すぞと。
 
 息を詰まらせる俺は、自分の持っていた反省文と前橋を見比べてダンマリ。
 一度あることは二度ある、正しくは二度あることは三度ある。現に事件は再び起きた。てことは三度目だって起こりえる可能性もある。いやもう起こってるかもしれない。担任にチクってないだけで、もっと多くの事件が発生している可能性もある。限りなく可能性は大だ。


 だああああっ、もう、メンドクサッ…(偽)田山圭太さん!
 

 んでもって俺自身も、結構メンドクサイ性格をしてるわけで? 実は負けず嫌いな性格をしているわけで? 二度も三度も四度も五度も、身に覚えのない反省文を書くほどお人好しでもないんで?

 噂で済んでそれに堪えるならまだしも、これ以上容疑をふっ掛けられるのは黙っちゃられないんですよ。どんどんエスカレートしていきそうだしっ、最悪退学させられそうなイヤーン事件を起こしそうな気がして気がして。




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あきゅろす。
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