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10-03




「大変そうッスね。俺っち、姉貴達が一人暮らしって大変って言ってましたッス」

「え、キヨタ。姉ちゃんがいるのか?」


 隣でモトとPSPをしていたキヨタが元気よく頷く。
 「兄姉達が一人暮らしなんっス」と舎弟が教えてくれる。兄姉達? ってことはまだ兄弟がいたりするのか?
 疑問符を浮かべていると、「キヨタのとこ七人兄姉だぜ」モトがゲームをしながら教えてくれる。な、七人兄姉?! 目を丸くする俺達に、キヨタは言ってなかったですっけ? と首を傾げる。

「俺っち、末っ子なんっス。一番の上の姉貴はもう三十路近くて、結婚してますっス。で、社会人になっている姉貴が二人、兄貴が一人。専門学生の姉貴に、大学一年の兄貴、最後に俺っちになってますっス」

 うっわぁあ…、お母さん頑張り過ぎだろ。七人も子供を産むなんて。
 お母さんは少子高齢化している日本に十分貢献しているよ。すごい、ほんっとすごい。あ、でもキヨタが末っ子ってのは分かる気がするな。そういう空気が漂っているもん。
 
 いっつも兄姉からおもちゃにされていたのだとぶすくれるキヨタは、「真の兄貴は貴方だけですぅう!」俺に飛びついてきた。
 弁当を落っことしそうになりながら、俺は舎弟の体を受け止める。まったく今日も俺はキヨタに愛されているんだぜ。嬉しい限りなんだぜ。ちょっち色眼鏡で見てくるのが困るんだけどさ!


「話は戻すけど、シズが落ち着いたらさ。皆でお祝いしてあげようよ。プレゼントに使えそうな日用品を用意してさ! 鍋パーティーとか楽しそうじゃない?」
 
 
 弥生が案を出した。
 
 こういうパーティー事が弥生は大好きなんだ。んでもってリーダーも賑やか行事が大好きだから、大賛成だと指を鳴らす。
 誰かの家だったら気兼ねなく飲酒ができるとか悪い子ちゃん発言しやがった。結局そこにいくんだな、お前は。好きだよなぁ、なんちゃって悪いことするの。未成年のくせにさ。で、大抵悪い子ちゃん発言をしたらワタルさんが乗ってくるものなんだけど、今のところ不在だったりする。

 学校に来ていないみたいなんだ。理由は分からない。
 けれどワタルさんのことだから、そのうちひょっこり顔を出すと思う。おサボリしている可能性は大だ。神出鬼没だからな。きっとこんな話をしていたら、「なあに話してるんだっぼーん?」ほおらきた。



「ワタルさん、丁度良かった。今、シズの一人暮らし……、どうしたんですか…、その姿」



 俺の言葉は途切れてしまい、一変して瞠目。ヨウ達も目を削いだ。

 脱いだブレザーを肩に掛けて現れる姿はまるでトラさん。
 でも制服の汚れや、ワタルさん自身の怪我を見る限り、男はつらいよごっこをしているとは到底思えない。切れた左口端を舐めて、よろっと体勢を崩しつつ、「参ったまいったけ」うざ口調でこっちに歩んでくる。
 
 喧嘩でもしてきたんだろうか。ワタルさんらしくない酷いヤラれ方だけど。
 段に座り込むワタルさんの怪我を見るや、弥生がハンカチを濡らしてくると手洗い場に向かった。お頼み申します、ひらひらっと手を振るワタルさんは参ったと染めたオレンジ髪をぼさぼさに乱して溜息。髪が邪魔だったのか、黒の髪ゴムで一つに結い始める。
 「どうしたんだよワタル」お前は鬼畜不良だろ? 鬼畜返しでも食らったのかとヨウ。にへらへらと笑うワタルさんは、そんなところだと両手を挙げた。


「僕ちゃーん、Mじゃないんだけどね。ちょーっち仕掛けてきた敵さんがエスい方々ばっかりで。人数の多さに本能的危険を察知して…、逃げてきたっぽーん」
 

 何人かは伸してきたんだけどねー。
 
 間延びした言い方のおかげで、出来事が軽く感じられるけど重々しい事件だ。




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あきゅろす。
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