01-16
曰く、二人はオリエンテーションを受けている真っ最中らしい。ヨウの携帯にモトがメールを送ったとか。
てことはあの中坊二人が最後か。あ、ちっげぇ。今年から正式な俺等の後輩か。なんたってあいつ等、今年から高校生なんだぜ? 学ランから俺等と同じブレザーを着るんだぜ? 変な感じだよなぁ。
俺の中じゃずーっと学ランを着ているイメージがあるだけに、あいつ等二人が今年から後輩になるなんて信じられない。
まさか揃って俺等の高校に入学するなんて…、確かに二人とも俺等の高校に入学するって宣言してたけど…、ホンット有言実行する奴等だよな。
……あいつ等が入学してきたことで、ますます学校生活は煩くなりそうだけど。
「そういえばケイさんは、どうして学校に居残りを? 係り決めの時に何かあったってヨウさんが…、あ…係り…、ど、どうしよう」
「ん? どうした? 変な係りにでもなった?」
俺の話題には触れず、係りのことに話題を向ける。
そしたらココロ、「ううっ」っと唸り声を上げて風紀委員になってしまったのだと溜息。比較的風紀委員は不人気な係り、結構皆から嫌われる役目を持ってるしな。特に風紀検査とか。ココロは大人しく図書委員になりたかったらしいんだけど、じゃんけんに負けて風紀委員になってしまったとか。
彼女が一番、頭を悩ませているのはまさしく嫌われ要素満載の風紀検査。
「私、今年はシズさんと一緒のクラスなんですけど…、シズさんの髪の色を注意しないといけないと思うと胃がっ。シズさんならまだしも、クラスには男女問わず、こっそりと眉を整えたり、くるぶしソックスを履いてきたりする人達がいるんですよ。その人達に注意するなんて思うと…、うーっ、どうしましょう…」
「大丈夫だって。適当に仕事してる振りしとけばいいし、案外さ、風紀委員の注意ってみんな受け流してるじゃん? 身構えるんじゃなくて、なるようになるさ思考で過ごせばいいよ」
「それはそうですけど」むぅっと口をへの字に曲げる彼女は、あんまりクラスメートと関わりたくないのだと吐露。
何故なら自分は人見知りが激しいから、どうしてもクラスメートに対して身構えてしまう。悪い一面だと分かっていても、この性格はなかなか直せそうにない。シズさんとクラスメートになれたことは良かったけれど、ブツクサと独り言を漏らすココロは「それに」と眉根を寄せた。
「私、響子さんといつも一緒だから…、ちょっと敬遠されてるみたいで。普通に喋ってきてくれる人も、勿論いるんです。でも…うーん…。響子さん、学校じゃ悪評なんです…。悪い人じゃないんですけど」
そっか。ココロも似たり寄ったりな環境にいるんだな。
そうだよな、俺等、元々日陰組のジミニャーノ。各々ワケあって日向組の不良とつるむようになった。不良達と友達になれたことは後悔なし、だけど不慣れな環境に戸惑うことも多々あるよなぁ。
「一つ係り決めで良かったって思うのは風紀委員のお相手が、私と普通に話してくれることなんです。その人とは去年から同じクラスで、サッカー部に所属している人なんですけど、皆と隔たりなく接してくれる人だから話しやすいと言いますか。なんというか、立ち位置的にヨウさんみたいな人なんです。クラスの人気者で、結構カッコイイんです」
ピシッ―。
表の俺は表情が強張り、内なる俺が叫んでる。
カッコイイってなんじゃらほいカッコイイってなんじゃらほいカッコイイってなんじゃらほいエンドレス…っ。
こ、これが俗にいう嫉妬ですね。分かります。自覚はしています。理解もしています。でも、でもでもでもっ、やっぱヤじゃんかっ。他の男の子に向けて『カッコイイ』とか! くっそーっ、これも苦行だぞ俺。寛大な心を持たないといけないんだぞ俺。彼女の気持ちを知ってるじゃないか、嫉妬なんて醜いぞ俺!
心中で大荒れになっている俺を余所にココロは照れ照れに笑って一言。
「でも、カッコ良さ度はケイさんに負けますけど。な…なんたってケイさん、私の憧れの人でヒーローですもの」
〜〜〜ッ、相変わらず俺の彼女は田山落としがとてもお上手のようだっ。俺殺しが上手過ぎる。
んでもって、勘弁してくれよココロ。マジそういうこと言うの。
「ケイさん顔赤いですね」ココロの無邪気で悪戯っぽい声に、「誰のせいだと」俺は弱々しく反論した。
ほんのり頬を紅潮させて笑うココロは、私の勝ちですとあどけない表情を見せてくる。事件のことであんなにささくれ立っていた心が、とてもとても穏やかになった。現金な性格だよな、俺も。
彼女の笑顔で荒れていた感情が緩和するなんてさ。
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