01-15
「中途半端、か。考えたことも無かったなぁ。今までこれで突き通してたから…、確かに言われてみれば半端かも、俺」
ある時はクラスの日陰キャラとして、またある時はクラスの(悪い意味で)日向キャラとして、今日まで何気なく過ごしてきたけど、改めて思えば俺って半端だよな。
不良かって聞かれたら、そうには見えないだろ? って返答するし、地味くんかって聞かれたら、不良と絡んでるんだけど…と答えを返すし。
だから俺って仲間内からは“地味不良”って言われてるんだけど、うーん、半端だよな。立ち位置的に超中途半端。
半端だから環境の変化に居心地が悪いって思うのかも。
いっそ、ヨウ達みたいにどどーんっとででーんっと不良になっちまったら人の目も気にならなくなるかもなぁ。あー頭がグチャグチャしてきた! やめだやめ、考えるだけ損な気がしてきた!
俺の名前を悪用してる奴がいるのは頂けないけど…、丁度昼飯時、腹も減ってきたことだし、考えるのはやめて皆のところに行こう。
たむろ場に皆、集まってる筈だよな。
俺等の指すたむろ場って二箇所あるんだけど、今日は確かスーパー近くの倉庫裏に集合って言ってた筈。俺は愛チャリを取りに行くと、いざたむろ場へ。ペダルを踏んで、真っ向から吹く風を頬で感じながら俺は正門を目指す。
皆と話せば少しは鬱々とした気持ちが晴れてくれる筈だよな。
正門を潜った俺はそのまま右にハンドルを、っとぉおおおお?!
キキィイイ―――!!
俺は慌てて急ブレーキを掛けた。
甲高い自転車の悲鳴が上がったけど、それ以上に俺の方が素っ頓狂な悲鳴を上げちまう。だって、正門前に立っていたのは大人しそうな他校の女子生徒さん。俺等の学校がブレザーに対して、向こうはセーラー服を身に纏っている。
「遅いですよ」ちょこんとそこに立って、モジモジと指遊びをしている彼女こそ、俺のカノジョだったりするわけです。はい。
超可愛いです。
失礼ながら一般論から述べたら、俺と同類のジミニャーノで並の立ち位置にいるのですが、俺のカノジョは超可愛いです。何度だって惚気ちまうほど、可愛い…じゃねえ!
サプライズに俺は目を白黒させた。
「なんで此処に」キョドる俺に、「メールしましたもん」ココロはぶうーっと唇を尖らせる。
え゛? 嘘!
俺はブレザーのポケットに手を突っ込んで、恐る恐る携帯を開く。
新着メールが一件…、中身を開けばっ、ああっ…ココロから来てる。『正門前で待ってます』ってメールがっ、サイレントにしてるから気付かなかったっ。
うわぁああああ、これも前橋のせいだー! お前のせいでカノジョのメール気付けなかったじゃんかよー! 八つ当たり? ベラボウのドチクショウ、八つ当たり上等でい!
「ご、ごめん」俺は詫びを口にした。
ぶうっと脹れていたココロだけど、すぐに笑顔を零してたむろ場に行こうと言葉を掛けてくれる。
ホッと安堵の息をつきながら頷く俺はココロをチャリの後ろに乗せようと声掛け。でもちょいと考えて、「やっぱ俺が歩くよ」チャリから降りた。チャリの後ろにココロを乗せるんじゃなくって、ココロと歩調を合わせることを選びたくなったのは彼女とゆっくり話す時間を設けたかったから。
他校同士の俺達にとって二人の時間って結構大事だったりするわけだ。
俺はチャリを押しながらココロと歩調を合わせ歩く。
視界の端に飛び込んでくる色素の薄い黒髪はサラッとそよ風に靡いていた。緑の黒髪とまではいかないけど、サラサラと風に靡くココロの髪はナチュラルな黒色で綺麗だった。隣を歩く彼女の髪、本当に綺麗だと思った。
ココロの肩には通学鞄がない。たむろ場に置いてきたのかな? ということは一度、たむろ場に向かったのかな?
率直に質問をぶつけると、彼女はこっくりと一つ頷いた。
「いつもの場所で皆さんを待っていたら、ヨウさん達が来て。だけどケイさんの姿が無いから……、訊ねれば、まだ学校にいるとお聞きして、ついつい迎えに来ちゃいました」
どうせあそこで待つ間、手持ち無沙汰でしたし。
ふっと目尻を下げて、俺を見上げる彼女の柔和な微笑にちょいと照れつつ、「あんがと」俺も目尻を下げて綻んだ。お礼にココロは嬉々溢れた笑顔を浮かべる。彼女は本当によく笑うようになった。去年に比べてよく笑うようになった。嬉しい限りだ。
「皆はもう集まってるのか?」「モトさんとキヨタさんがまだです」質問に彼女は即答してくれた。
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