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01-14




 不良とつるんでるって時点で、あいつも“不良”なんだ。

 
 そういう目で見る側は慣れっ子だけど、見られる側は初めてなもんだから…、わりと戸惑ってる。あくまでわりとな。ジミニャーノ達が変わらず接してくれているのが救いなのかも。
 ジミニャーノ達にまで敬遠されちまったら、俺、完全に途方に暮れてただろうなぁ。ヨウ達が傍にいてくれてもさ。
 今まで地味の平和平穏安穏に暮らしてきたからこそ、戸惑う環境の変化。


 ま、それでもさ。


  
「あいつ等、俺の大事な友達ですから…、友達を巻き込みたくないって気持ちは理屈じゃない。そうでしょう?」

 
 
 「ま、確かにな」表向きでも同調してくれる前橋は、「大体」と言った直後、俺の右頬を抓んで容赦なく引っ張ってきた。
 「いひゃいっ!」悲鳴を上げる俺に両口角をつり上げて、前橋は左の頬を抓んで引っ張ってくる。
 

「田山、お前、ハッキリ言って不良なのか、良い子くんなのか、分からないんだよな。中途半端に悪ぶったり、良い子ぶりやがって。荒川達とつるんでるってのに、なんだ? この制服の優等生っぷり。風紀検査で未だに一度も引っ掛かったことないだろ?」


 ご尤もです!
 だって面倒じゃないっすか! 風紀のことでゴッタゴタ言われるの! ……てか、痛い、前橋…地味に痛いっ、手ぇ、手を放せって!
 
 机を叩いてギブアップ宣言する俺に担任は一笑。
 手を放して「悪かったな」再度詫びを口にしてきた。それは事情を聴かず、俺に疑いを掛けたことへの詫び。俺は頬を擦って前橋を見据えた。担任は視線を返して、スーッと目を細める。
 

「田山、覚えとけ。学校は世の社会のミニチュア版。甘いところは甘いが、冷たいところはとことん冷たい。お前は性格的に大人しいタイプだ。荒川達とつるんでいるのもいいが、お前の合ってる環境に戻った方がお前自身のためだ。半端な儘じゃ荒川達とつるむのは辛い」


 半端って、俺の身形のことか?
 そりゃ外見は地味で、だけど中身はちょい地味を卒業しちまった不良もどき…、だけど。
 

「また今日みたいな騒動があったら」


 今度は荒川達も呼ぶ、勿論犯人扱いじゃなくて事情を聴くために。

 前橋の言葉に、「だから」これは俺の問題じゃないですか、何度目かの反論を零した。前橋はなんで分かってくれないんだよ。名前、悪用されたのは俺だぞ。ヨウ達じゃないんだぞ。あいつ等、なあんにも関係ないんだぞ。
 いっくらお友達でもなぁ、お友達の身に降りかかった災難が向こうに飛びするのはお互い気分悪いじゃんかよ!
 
 理解を示してくれない前橋についつい、「反省文」明日までに提出しますから、半枚にしかならないでしょうけど、皮肉を飛ばして席を立つ。


「反省文で今日のことは終わらせて下さい。それでは失礼します」

 
 通学鞄を引っ掴むと会釈して教室を飛び出した。
 
 
「あ、田山! こら、話は終わってないんだぞ!」
  
 
 こっちは終わったっつーの!
 これ以上、話し合っても、前橋のお小言を頂戴するだけじゃんかよ! 大人としての説法はもう十二分に聞いたっつーの!

 俺は二段越しに段を跨いで階段を颯爽と下りて行く。
 駆け足で靴箱前まで来た俺は、靴を履き替えて昇降口を飛び出した。気持ち的にモヤモヤしていたんだ。だから走れば少しは解消するんじゃないかと思った。だけど、解消する前に俺の走るスピードが減速。重たい溜息をついて走るを歩みに変えた。

 頭の後ろで腕を組んで、また深い溜息。
 前橋の言葉が棘となって胸に突き刺さっていた。
 




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あきゅろす。
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