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08-18


  
 ただし、勘違いしないで欲しい。あくまでこれは俺自身の単独行動。荒川チームは無関係だ。べつに荒川チームが日賀野チームのために手を貸しているわけじゃないし、俺個人が日賀野チームのために手を貸しているわけでもない。俺個人が健太という友達を助けるために手を貸すまでのこと。
 もし日賀野チームが健太の事件を解決できないようなら、俺はこの問題を自分のチームに持って行く。それこそ健太をチームに引き入れる勢いだ。チームが駄目と物申せば、俺個人で行動する。そう、これはすべて俺の独断だ。

 俺が友達を助けたい、その気持ちで動いているまでのことであってチームのためでもなんでもない。それを覚えておいて欲しい。
 
 リーダーに直談判すると、「随分と強気だな」弱いくせに、と皮肉ってくる日賀野。
 だがその心意気は気に入ったとシニカルに一笑。途端に俺は気に入られたくないと体ごとを引いた。俺、お前に気に入られても嬉しくない。ちっとも嬉しくないから! だってお前が気に入るイコール、苛めたくなるってことだろ! そっろそろ俺、お前から解放されたいんだけど! 誰か、だれか、俺の身代わりになってくれる奴はいないか!
 

「ククっ…愛されてるな…。ヤマトに…、ククッ…、お前…、いじられキャラ」


 くつくつと喉を鳴らして笑うススムは、俺の顔を見てぶふっと噴き出した。失礼な奴だな。俺はこんなにも困っているのに!

 こうしている間も忙しなく俺の携帯は着信を奏でる。相手は勿論ヨウ。犬猿の仲にあんな言い方をされちゃ、あいつの性格上、闘争心に焚きつかないわけない…、今頃怒ってるんだろうな。目に浮かぶよ、あいつのイッライッラしながらコールをBGMに携帯を握り締めているお姿がさ。
 日賀野に掛けるなって言われて、あいつが素直に「はい。掛けませんごめんなさい」なんて絶対あるわけないしな。

 携帯の電源を落としておくべきだろうけど、健太のことを思うとどうしても電源が落とせない。
 そのため俺は着信が途切れた頃合を見計らってマナーモードにする策をとった。ごめんヨウ、今回ばかりは健太のために俺、こっちのチームに手を貸すよ。あくまで友達のために。荒川チームで動くのはあくまで最終手段。これは日賀野チームの問題であり、俺個人の問題だから。
 
 「取り敢えず」ケンのことについて全員にメールしたよ、ホシが日賀野に告げる。 
 此処にいない面子が集合するのも時間の問題だろう。ホシの一報に頷き、これからどうやって健太の動きを掴むか、日賀野は膝に肘を置き頬杖をついた。魚住の情報網で情報収集する。それが最善の策であり唯一の策。
 だけどこれは時間が掛かると黒髪青メッシュ不良は苦々しく溜息をついた。日賀野は半日で解決させたいんだろう。

 だからちょいと時間を要してでも、最短の手で解決したいところだと意見した。
 
 気持ちは分かるけど、そんな手…、健太が連絡をくれない限り無理だ。
 あいつが直接電話を掛けてこない限り、こっちも動けない。


(健太…)


 俺は震えている携帯を見つめる。
 まだ着信が続いている携帯。それはヨウが粘り強く電話を掛けている努力の証だ。バイブレーターが止まると、俺は携帯を開き、新規メール画面にする。そして短い一行文を送った。たった一言、これがあいつに届けばいい。その思いでメールを送信。あいつが読んでくれることを祈った。

 その間にも、日賀野チームの面子が揃い始める。
 雄叫びを上げ、なんで俺が此処にいるのかと吠えるイカバ。面白半分にこっちを見てくる紅白饅頭双子兄弟。ゲームに熱中していてまったく周り変化に気付いていないアズミに、ヨウの元セフレ・帆奈美さん。
 各々の面子に日賀野が事情を説明し始めるけど、俺の耳には届かない。
 
 とにかく祈った。
 俺が送ったメールを読んでくれることに。その一文はきっと健太にとって、「なんの悪意あるメールだよ」と苦笑いしながら、それでも俺との約束を思い出してくれるであろう一文だと思う。頼むから読んでくれ、祈る気持ちでソファーに座り続ける。
 震え続ける携帯の画面を見つめながら、俺はただひたすら待った。健太の連絡を。




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あきゅろす。
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