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08-15




「大体、プレインボーイがさっさと落ちないから俺はあのクソバカに負けてるんだぞ。あ゛ーん?」


 この俺が思い通りにならないなんてなかったんだ。責任とって貰わないとな。
 非常に傲慢な発言を零しながら、日賀野は俺の耳を引っ張ってくる。イデデッ、そ、そんなこと言われてもっ、落ちるわけないじゃないですかっ! あんなにフルボッコしてくれてたんだからっ!
 「い、いじめヨクナイです!」思い切って反論してみると、「可愛がってるんだが?」思い切り悪意ある笑みを向けられ、腕で首を絞められる。
 ギ、ギブギブ! ヤだもう、この人。俺は泣きたい! 帰りたい! 誰かに助けを求めたい!
 
 間違った可愛がりを受けている俺を流し目にしていたホシが、「それでさ」結局何の用? やんわり助け舟を出してくれた。
 本当に舎弟になりに来たなら歓迎するけど、「チームの糧になるしね」皮肉を込めてくれるホシ。俺達の様子にくつくつと笑っているススムは、また荒川チームと対峙しそうだとその笑いを噛み殺している。
 
 我に返った俺は日賀野の腕から脱して、携帯を握り締めながら健太の行方をリーダーに尋ねた。
 
 「ケン?」一変して訝しげな面持ちを作る日賀野は、ここ三日たむろ場に来ていないと答えた。便乗してくる魚住も、「学校にも来とらんぞい」と肩を竦めてくる。メールをしても返事が来ないそうな。魚住はあまり気にはしていないようだけど、その事実を聞いた瞬間、俺は持っていた携帯を開いて健太の自宅番号を呼び出す。
 一体なんだと怪訝な眼が飛んでくるけど、俺は構うことなく健太の自宅に電話し、家にいたおばちゃんと会話。そして静かに電話を切ると、息を詰めて身を震わせた。
 
「健太…、昨日から家に帰っていない。じゃああいつ、何処から電話してっ」

「プレインボーイ。ソファーに座れ。事情を聴く」

 さすがは頭脳派不良、俺の様子で何かあると察したのだろう。
 踵返すと早足でソファーに戻り、トランプをしているホシ達に目で片付けろと指示。手早く片付けを始める動作を横目で見ながら、俺は駆け足でソファーに向かう。その間の時間も惜しくて、俺は早々に話題を切り出した。健太がおかしいのだと。
 
 それこそ健太が二週間ほど前から悩まされていたストーカーの話。三日前の出来事と合わせた手紙の話。最後に俺に掛かってきた電話の話。包み隠さずリーダーに説明する。
 「ストーカー?」眉を寄せる日賀野は、初耳だと言わんばかりにしかめっ面を作る。そりゃそうだ。健太、チームには黙っていたんだし。
 どうしてもチームに一個人の問題を持ち込みたくない。でも抱え込んでいるのも辛い。だから俺に悩みを打ち明けてきた。その旨をしっかり話しておく。

「あいつには何度もチームに相談するように言ったんですけど…」

 その様子からして健太は俺と会った日を最後に誰にも悩みを打ち明けていないよう。
 吐息をつく俺の隣を陣取るススムが一ミリも笑わず、「ケンが…」赤髪を掻いて日賀野に視線を流した。足を組んで顎に指を絡める日賀野は、やや間を置いて口を動かす。

「最近。不可解に不良達が甚振られているという話を聞いたことがあるんだが」

「甚振られている?」

 聞き返す俺に首肯する日賀野は、「ただの喧嘩でヤラれるんじゃねえ」まるで誰かに甚振られたような味の悪い喧嘩が多発しているのだと教えてくれた。

 聞くどの話も不可解なヤラれ方。姑息な手を使う自分達が言えたことではないが、それはそれは姑息な手を使われたような、目を瞠るヤラれ方をしているのだとか。

 「貴様のチーム」先日、真杉と喧嘩したと聞いているが…、詳細を話せと目で訴えられたから俺は語り部に立つことにする。
 



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