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08-13



 俺は携帯をチャリのカゴに放って、鍵を引っ手繰りだす。

 今回ばっかは自分のチームに頼れない。
 もちろん俺一人で解決できるとは毛頭も思わないさ。

 でもこれはヨウ達に頼るべきことじゃない。あいつのチームに頼るべきこと。
 健太が嫌がろうと、もう強行手段に出るからな俺。わっざわざトラウマに会いに行くんだ。寧ろ感謝しやがれよドチクショウ。

 大丈夫、もしもチームが動かなかったら俺が自分のチームに頭を下げて頼むさ。
 友達のピンチを救いたいから、手を貸してくれって。それでも駄目なら俺だけでもあいつの味方になるさ。だってあいつは俺の大事な友達、友達だから!


 チャリをかっ飛ばして大通りに出た俺は、すぐさまゲーセン隣の裏道を入った。
 日賀野チームのたむろ場になら一度赴いたことがある。確か四丁目商店街外れの地下のバーだ。
 ヨウ達と宣戦布告する前はどっかの倉庫だったらしいんだけど、去年正式にヨウ達と宣戦布告してからは地下のバーテンに移転したって健太が言っていた。

 なんでもメンバーの中にバーを持つ知り合いがいて、そこを借りているそうな。
 今は休業しているらしくて、好き勝手日賀野チームが使っているらしい。

 ちぇ、いいよな。
 建物内にたむろ場がある奴等は。雨風凌げそうじゃん。

 俺達のところなんて冬とかめっちゃ寒いぞ。
 だから冬はもっぱらゲーセンに長居するんだよ。冬の出費は半端ないぞ。
 ゲーセンの魅力に負けてゲームをやりまくっているうちにすっからかんになんだからな。

 俺はチャリを漕ぎながら、幾度となくカゴの中で飛び跳ねている携帯に目を向ける。着信は来ない。

 マジ何しているんだよ、健太。
 動揺していても良かったから、もっとちゃんと声を聞かせてくれって。変に電話を切られた方が焦るっつーの。

 フルスピードでチャリを漕ぐこと数十分。俺は静寂な住宅街を突っ切って、風を頬で感じて、髪を微風に靡かせて、大通りへ。

 そこから一直線上に道をなぞる。
 通行人が行き交いする中、人とぶつからないよう注意を払いながら活気ある商店街を抜けて、ずっと先のさきの逸れに向かう。
 店の姿がまちまちに、そしてシャッター通りに差し掛かる頃、俺は商店街外れのとある一角にある地下のバー前でチャリを停めた。

(嗚呼、なつかしや)

 スプレーで落書きされた洒落た壁さんに、小さな衝立看板さん。
 階段と一緒に設置されている手摺を目でなぞっていけば、階段の終尾に重量感ある木造の扉。おどろおどろしい扉に俺はドッと冷汗を流した。

 おぇっ、吐きたくなってきたぞ。
 勢い良く飛び出して来たのはいいけど、マジ吐きたい。
 ひとり勇者になって此処まで来た俺は偉い。でも怖い、怖い、コワイィイイ。変に鼓動も高鳴ってきたしさ。

(いやでも行くっきゃないだろ! け、健太のためだ!)

 チャリから降りた俺は、携帯を片手に持つと震える体に一喝。 
 生唾を飲んで地下に続く階段を一歩、また一歩下りて行く。コツッ、コツッ、靴音と共に例のおどろおどろしい扉が近づいて来る。

 なんだろう、一歩下りる度に空気が薄くなっていくような。
 い、息苦しさを感じるぞ。俺の中のトラウマ魂が悲鳴を上げている。
 第二の俺が帰りたいと切に訴え、会いたくないと胃がのた打ち回り始めている。よって吐き気が倍増したりしなかったり。
 



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あきゅろす。
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