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08-09




「おれさ。圭太に悩みを聞いてもらえれば、それで良いって思っていたんだ。怖いのは本当だし、独りで抱えているのも辛くて…、お前に会ったら元気も出るんじゃないかって思って同窓会に参加した。純粋に忘れたかったのかも。こんなクッダラナイ悩みをさ」

「健太…」

「んー、ちょっち考えてみるよ。サンキュ。やっぱお前に会えて良かった。おれと同じ立ち位置にいる圭太が的確なアドバイスしてくれるから、ちっと心が軽くなったよ。そうだよな、何かある前に相談した方がいいよな。チームのためにもさ」


 いつもの笑みを浮かべる健太に俺も笑みを返して、「なんかあったら」すぐ相談して来いよ、俺はビビンバの中身を長匙で混ぜる。
 それこそニキビができた、なんてクダラナイ相談だって受け付けるさ。お前は俺にとって大事な友達なんだから。笑声を漏らす健太は「おれも愛されているねぇ」やばいやばい、惚れそうじゃないかとおどけてくる。それでこそ調子ノリ健太だ。俺も安心だよ。

 二人で笑い合っていると、「ねえねえ」クラスメートが話し掛けてきた。
 こっち来て話そうよ、意味深な言葉と共に女子が綻んでくる。たしかこの女子の名前は八坂さんだ。野郎だけで話していても面白くないでしょ、とか言ってくる八坂さん。まんま合コンのノリだなこれ。

「今ね。フリーかどうか聞きまわっているんだけど、二人は? 二人ともイケ始めたじゃん。まあ、中学よりは」

 誰がどう聞いても世辞だって分かるよ八坂さん。
 んでもってイケたとしても俺達、悪い方にイケ始めたから!

「おれはフリーだよ。圭太は超可愛い彼女がいるけどな」

 「ゲッ。マジかよ!」話に食らいついてきたのは武藤だ。


「お前は彼女なんて作るタイプじゃなさそうだったのに、学生のうちは絶対フリーだと思っていたのに! 自分抜け駆けですか、リア充め!」


 捲くし立てる武藤に俺は苦笑い。それはどういう意味だよ。
 「山田くんフリーなんだ」じゃあ今、フリーになっている波子とかどう? 満面の笑みを浮かべてくる八坂さんは、小声で健太に囁いた。途端に血相を変える健太は冗談じゃないとばかりに首を横に振った。なんで自分じゃなくて他人をチョイスするのか分からないけど、でもイイコト聞いちゃったな。
 あの人、今フリーなんだ。へぇぇえ、人の恋愛事情は鼻で笑っておいて自分はフリーの御身分ですとな? 中学時代にお付き合いしていた彼氏様はどうしたんでしょうかね? 毒舌に耐えかねて逃げられちまった?

 俺はおやおやんと意地悪い笑みを浮かべて、毒舌の波子に視線を流す。
 悪意ある俺の視線を受け止めた毒舌の波子は、視線だけで意味を察したのか右中指を立ててきた。お行儀が悪いお嬢さんだこと。俺はニタッと笑みを送って、視線をそらすことにする。
 「む、ムカつく」なんであいつにいっつもリードされているのよ! なんて盛大な独り言が聞こえたけど、俺は右から左に聞き流してお肉を頂きます。

 あー美味い。
 程よい肉厚とジューシーな旨味が舌を喜ばてくれるんだぜ。胸もスカッとしているし、余計肉が美味い。美味い。

「人の良いところを見ないから逃げられたのかもなぁ。人を貶してばかりじゃ、人は逃げる一方ですよ。はい」

「ッ、田山! 聞こえているんだけど!」
 
 「単なる独り言ですから」ヘボ山のことなんてお構いなく、俺は相手にそっぽ向いて健太の海草サラダを摘んだ。
 「お前ねぇ」どんだけ喧嘩売ってるんだよ、健太には盛大に呆れられたけど、先に喧嘩を売ってきたのはあいつだぜ? 俺は悪くない。ギリリと奥歯を噛み締めてくる毒舌の睨みは総無視し、俺は昼飯を食べることに集中した。
  



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あきゅろす。
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