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08-06



 専ら二人の近状を聞くことにした俺と健太は、二人の今ハマっている趣味やら、ゲームやら、地雷とも言うべき武藤の嫁さん等などで談笑する。
 肉を焼き始めると、東島は早々と離脱。肉に集中し始める。武藤も俺達以外の人間と駄弁るために、他のクラスメートに声を掛けていた。東島も他の奴等の近状が知りたいのか、武藤側の会話に加担していたりいなかったりだ。
 
 しごく消極的な俺と健太は二人が変わっていないことに笑いながら、テーブルの片隅で肉を食べ始める。
 タレに肉を浸しながら、「懐かしいな」と健太が話を吹っかけてくる。「ああ」中学時代に戻った気分だと頬を崩し、俺は焼肉を口に運んだ。不良の“ふ”も関係ないあいつ等と喋ると中学時代の記憶が蘇る。おかしいな、三年も経っていないことなのに遠い遠い昔のように感じるなんて。
 きっと今いる環境が濃いんだろうな。不良達と一緒にいることによって、一日いちにちが濃い。それは濃厚な時間を過ごしている。

「お前と、こうやって普通にメシ食えるなんてな」

 健太が笑いながらあの頃話を切り出してくる。
 「絶交は痛かったな」俺もあの頃話を笑い話に変えて目尻を下げた。あの頃は傷付いて、挫折して、すべてにもう駄目だと嘆いていたのに。

 俺は健太に近状を話すことにした。
 同じ日陰男子出身で、同じ不良チームに属している健太にならなんでも話せるから。
 まず俺は舎兄に無理やりピアスをあけられた事件を話す。俺の左耳たぶを見た健太は、「おれもアキラさんに」あけられたんだと一笑。それに笑みを返し、俺は自分の居場所にちょっち悩んでいることや、真杉や楠本の喧嘩、そして舎弟を作ったことを話す。
 
「舎弟ってお前のことを超愛している後輩くんか?」
 
 健太はキヨタのことをちゃんと憶えているらしく、お前への愛すごいもんなと感心してくる。あんま嬉しくない感心のされ方だ。
 苦笑いを零し、俺は舎兄になったことに一抹の不安があるのだと健太に吐露する。根底に手腕に対するコンプレックスがあるからだろう。舎弟でも手一杯な俺だから、舎兄として舎弟を引っ張れるか不安で不安で。
 けどキヨタと約束した。なんちゃって関係から本物の関係にするって。断言した以上、俺は努力していかないといけない。ただ…。


【1分で分かる当時の会話回顧禄】
 

「ケイさぁああああんっ! 何か御用はないっすか! 俺っちをなんでも使って下さい!  ジュースだって買いに行きますし、喧嘩だって一緒に売りに行きますし、なんなら今から一緒にサボれますッス! ケイさぁああん!」

 
「お…、おばか! お前はなんで授業が終わるごとに飛んでくるんだよ! 舎弟になれて嬉しいのは分かった。分かったけどさ! ちょっと落ち着けお前ぇええ! キヨタは俺の舎弟であってパシリじゃないんだからさ!」

「あ、ヨウさん。これから若人の時代っスから、チャリの後ろは俺っちのものっス! だって俺っち、舎弟ですから!」

「な、なッ…なんだと! 譲れるか! あそこはな、むっかしから俺のベストポジションなんだよ! てか、若人の時代だと? 俺が老いてるとでも言いたいのか!」

「だぁああってちっとも譲ってくれないですもんっ! 俺っちもチャリの後ろに乗りたいっス!」

「一昨日きやがれ青二才。あそこは俺の特等席だ。テメェは自分のチャリでも買ってして、運転を伝授して貰えばいいじゃねえか」

「ケイさんのドライビングテクニックは真似できませんもん! ヨウさんのジジイ! 譲って下さいぃいい!」

「んだと?! 表に出やがれこのチビクソガキ! 俺はケイの舎兄だぞバカヤロ! 後ろに乗る権利は舎兄にある。そう、舎兄は偉いんだよ!」

「俺っちの兄貴はケイさんですもん!」

「ケイの舎弟イコール、俺の舎弟でもある! だから俺の言うことは素直に聞け!」

「リーダーのオウボー!」


「ヨウ! キヨタ! 教室で喧嘩するんじゃありません! てか、お前等、ただ単に楽したいだけだろぉおおお! 俺に楽させる気持ちはないのかぁああ!」


 ……、ちょーっちキヨタのラブモードが重くなり、俺の舎弟と舎兄のチャリの後ろ争奪戦が勃発しているんだよな。
 困ったな。キヨタの方は舎弟になれたことが嬉しくて興奮しているだけだろうから、時間が経てば落ち着くと思うけど、チャリはどう頑張っても無理。ママチャリみたいに前に一人、後ろに一人とか乗せられるわけないし。どっちにしろ俺は運転手だから楽できるわけじゃないし。
 確かに俺はチームの“足”だと自負しているけど、個々人の交通手段じゃないんだぞ。俺はタクシーか!




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