08-05
「あ、田山田コンビじゃんか。ん? 山田山コンビ? まあどっちでもいいや。久しぶりだな、お前等」
前方から声を掛けられる。
俺と健太は視線を上げ相手を確認。揃って武藤じゃんかと頬を崩す。
俺達に声を掛けてきたのは武藤 秀弥(むとう ひでや)。中学時代につるんでいたジミニャーノくんだ。超背が高いんだ。180超あるんだぞ。何を食えばそんなにでかくなれるんだろう? 特別すごい運動をしていたわけでもないのに。
ちなみにこいつ、めっちゃギャルゲーするオタクさんだったりする。ぱっと見そんな感じじゃないんだけどな。こいつのお嫁さん(ゲームキャラ)を幾度となく見せてもらったことがある。熱弁させると止まらなくなるから、俺も健太もあんまりお嫁さんについては触れないんだけどな。
武藤の隣には眼鏡をかけたぽっちゃりくん、東島 瀬那(とうじま せな)の姿も見受けられる。
こいつも俺達とつるんでいた日陰男子で親しみやすい。やや肥満気味なのは実家が和菓子屋だからだ。本人曰く、体躯の七割は砂糖でできていると冗談を口にしている。ダイエットをする気はさらさらないらしい。寧ろダイエット本なんて滅べばいいとか。恐ろしい奴だ。また一回りでかくなったんじゃないか? 縦にも横にも。
「久しぶり」ニッと綻ぶ武藤は開口二番に雰囲気が変わったな、と身なりを指差してくる。「だなぁ」東島はオーダーしたサラダをバリボリバリボリ。肉はまだかなぁとぼやいていたりいなかったり。
お前等は相変わらず変わってないみたいだな、なんか安心したぞ。
「武藤に東島は同じ高校に通っているんだよな。元気だったか?」
健太が頬を崩しながら話題を振る。
首肯する東島は変わらずの毎日を送っていると肩を竦める。勉強以外は中学時代と殆ど変わらない。武藤を筆頭にゲームの話やら、漫画の話やら、各々つるんでいる連中の趣味話で盛り上がっているとか。懐かしいな、俺も中学時代はそんなもんだった。いや高1のあの日まではそんなもんだったな。
懐かしさを噛み締めていると、健太がごく自然の動作で煙草を取り出した。喫煙するつもりだったんだろう。けどすぐ思い改めて、しまったしまったと苦笑を零す。
「同窓会中は吸わないって決めていたのに…、癖って怖いな」
「おいおい。いつの間に悪くなったんだ? 山田」
一笑する武藤は気にする素振りも見せず、煙草を手に取った。
銘柄はセブンスターか。わりと好きな銘柄だよ。俺はマルボロが好きなんだけどさ。健太に言うと、「マルボロね」まあまあ口に合うよ、と返事してくれる。
「なんだい? 君も吸っているの? 田山くん」
東島に質問されたから、「ごめんちゃーい」悪い子ですと軽く両手を挙げる。倣って健太も悪い子だと両手を挙げた。
俺達のノリに笑う東島は、中身は変わっていないじゃんと笑声を漏らす。深く俺達のことを聞かないことはとてもありがたいことだった。
不良とつるんでいる、二人がそのことについて知っているかどうかは分からないけど、あの頃を味わいたいからあんま深く聞いて欲しくはない。
不良達とつるんでいると知ってギクシャクなるのもヤじゃん? まあ、この二人がそういう人間じゃないってことは知ってるけどさ。
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