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01-11


 
 
 向かい合うように席に着かされた俺は、改めて新入生を見つめる。
 向こうも俺を見つめて、俺も新入生を見つめて、見つめて、見つめられて、エンドレス。

 微妙な空気が両者に流れた。
 えーっとまさか、お見合いごっこでもしようってか? 野郎同士で? 担任は親御役みたいな? いや楽しくないだろ…それ。 
  

 沈黙を作る俺等に対し、向こうの担任と前橋が席に着いて、まず俺の頭を前橋が下げさせた。


 アイテテテテッ、痛いイタイイタイ! 首の筋っ、筋がおかしくなるっ、イキナリなんだよー! ギブギブギブー! 悲鳴を上げる俺なんて無視する前橋は、「こいつが恐喝をしたみたいで」本当に申し訳ない、と新入生二人に詫びた。
 
 はあ? 恐喝? ちょ、恐喝ってナニ?!
 串カツは好きさ、トンカツも、ヒレカツも大好物さ。けどっ、恐喝は俺の範疇外っ、ナニソレ、俺、してないっ、恐喝してないからー!
 
 「お前も謝れ」前橋に言われて、俺はタンマをかけた。
 
 どうにか担任の手を振り払って「俺は何もしてませんよ!」大喝破の大抗議。寧ろ、此処に来るまで恐喝の「きょ」も知らなかったっていうのにっ、なんで俺、生徒指導室に入らされるや否や、身に覚えもない謝罪をさせられないといけないんだよ!
 抗議する俺に、「お前なぁ」この期に及んで何を言ってるんだと前橋は溜息をついた。


「今朝、登校してきたピッカピカの1年を捕まえて恐喝しただろ? この二人、『たやまけいた』って生徒に脅されましたって相談に来たんだぞ。これからの楽しい高校生活を決壊させるようなことしただろうが。謝るのは当然だろ」


 曰く、俺らしき生徒が昇降口にいた目前の新入生をとっ捕まえて、金を出せと脅したんだと。
 カツアゲもどきっぽいことをしたらしい、俺。新入生は怖くなって一目散に逃げたらしいから、カツアゲ未遂ってことだよな。

 うわぁ、俺も超悪くなったな。
 まさか人様の金を巻き上げるような、しかも新入生から巻き上げるようなことを…、まさしく不良の鏡に……待て待て待て!


「ちょ、待って、待ってくださいって! 今朝は遅刻ギリギリで、途中タコ沢…じゃない、谷沢くんとずっと一緒だったんですよ?! どうやったら恐喝なんてできるんですか! 証人なら谷沢くん以外にも沢山います。俺と谷沢くん、朝からちょっとドタバタと騒いでいて、それを目撃する人達沢山いたんですから!」


 疑うなら、まず此処に谷沢くんを連れて来て下さい!
 
 猛抗議に前橋は目を点、向こうの女教師(徳井っていうらしい)も目を点にした。
 「けどなぁ」田山圭太ってのはお前だろ、前橋はまだ俺に真っ直ぐと疑いを掛けてくる。だからぁ、俺は朝からタコ沢と楽しくも爽やかで地獄なおっかけっこをしてたんだって! 必死こいて逃げてる俺がどーやってピッカピカの一年生を恐喝するんだいべいべ!

 ドッペルゲンガーでもいない限り、俺が犯行するのは不可能だろ! 俺は多重影分身なんて使えないってばよ!
 

 俺の抗議に便乗したのは、まさかの恐喝された新入生二人組。
 

「確かに名乗ったのは『たやまけいた』でしたけど…、この先輩じゃなかったです。なんというか、こんなに大人しい人じゃなかったです」

「不良…さんみたいだったんですけど。連れもいましたし」


 ま、不良とつるんでいるわけですから? 俺も一応、不良の分類には入るんだけどな!
 
 新入生の言葉にほらみろ、と俺は前橋を睨んだ。
 でも前橋は悪びれた様子もなく、「不良ねぇ」だったらこいつとつるんでる仲間って可能性もあるな、と疑念が仲間達に向けられた。
 
 ちょ、まだ決まってもないのになんでそんなこと言うんだよ。三年かもしれないじゃんか! 俺の名前を悪用してる奴がいるかもしれないじゃんか! なんで勝手に、こっちの事情も聴かず特定しちゃうわけ? 激腹が立つんだけど。

 そりゃ…、去年の俺を知っているなら普通に疑いの目も向けるだろうけど、生徒のジジョーってヤツってのを聴くのが教師ってヤツなんじゃね?
 第一俺も仲間も恐喝なんて馬鹿なこと、するか! ドチクショウめ!


 煮え滾る思いを噛み締めつつ、表向きで俺は冷静を装う。
 

「なあ、そいつ等ってどんな奴だった?」

 
 俺の問い掛けに新入生二人は、ちょっと間を置いて「舎兄弟っぽかった」と答を返す。


「三人組だったんですけど、二人が一人の不良のことを兄貴みたいな口調で呼んでましたし」

「リーダーっぽい人の一人称がちょっとおかしかったような気も……、怖くて顔はあんまり覚えていませんけど、犯人が貴方じゃないことだけは確かです」

 
 そりゃそうだ、俺はタコ沢と仲良く『うふふダーリン捕まえてごらんなさい、捕まえてやるさハニー』ごっこをしてたんだからな。




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あきゅろす。
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