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01-10


 
 
 愚図ついた気持ちを抱きながら、俺は机に頬杖をついた。
 
 
 へーんな目で見られたくないから女子達には目を向けず(というか俺…拗ねてるかも)、黒板に視線を投げる。あっという間に決まった班の隣に、係りの名前を書き始める前橋。まず立候補から聞くぞ、なんて俺等に言いながらさらさらっと係りの名前を書き綴っていく。

 係り決めかー、学級委員とかそういった目立つ仕事はヤだな。面倒だし。
 んー、わりとサボりが多くなった俺だから、サボっても負担にならないような係りがいいな。


「前橋先生、ちょっといいですか」


 と、教室に別の教師の声。
 
 一斉に生徒が廊下側に視線を投げる。そこには女教師の姿が…、うーん、うちの学年には見ない顔だから、他学年か? 手招きしている女教師に歩む前橋は、彼女とヒソヒソ会話。
 なんかあったのかなぁ? なーんて思ってたら、前橋が盛大に溜息をついて額に手を当てた。
 

「分かりました。すぐに生徒とそっちに行きます。申し訳ございません。……お前等、俺は少しばかり席を外す。どの係りになりたいか、適当に決めといてくれ」

 
 あら、前橋、ちょっとお席を外しちゃうの?
 ラッキーといえばラッキーだけど、なんかあったのかなぁ。
 


「田山、お前は俺と来い」



 次の瞬間、俺は目を点にした。
 自分を指差して「俺ですか?」念のために聞きなおす。「早くしろ」唸り声を上げる前橋に、俺は心中で大絶叫。なんで名指しっ、俺指名?! なんかしたか? 俺、何かしたか!

 
「おいおい、ケイ。何したんだ? 喧嘩か?」


 ヨウが心配そうな眼を投げてきたけど、いやいやいやっ、俺は喧嘩できないし!


「お前が何かすると思えないが、取り敢えず行った方がいい」


 そっと利二が助言してきてくれた。
 うん、従うしかないだろうけど…、なに、この公開処刑もどきムード。
 
 
 生唾を飲みながら、俺は席を立って前橋と一緒に教室を出た。
 「はぁあ」大袈裟に溜息をつく前橋は、肩を並べる俺の頭を叩いて問題を起こすなよ、と愚痴を零した。目を白黒させる俺は、「何かしました?」恐る恐る聞き返す。そしたら前橋、自分の胸に聞けって突っ返してきた。
 

 な、なんだよ。
 

 そんなこと言われても思い当たる節が無いんだからしょうがないじゃないか! 焦る俺に対し、「まさか新入生を相手取るなんてなぁ」流石に想像もつかなかったぞ、前橋は苦虫を噛み潰したような顔を作る。
 新学期早々ナニやらかしてくれるんだ的目で俺を見てくるけど、新入生? 相手取る? 意味不明。略してイミフー。
 
 ワケも分からず、俺は前橋と共に足を生徒指導室へと向ける。
 
 中に入るとそこには二人の男子生徒が…、真新しい制服からして新入生みたいだ。曇天模様の顔を作っている二人は、俺等が入って来るや否や瞬きの回数を多くして、こっちを凝視。俺も二人を凝視。
 

 うーん、俺等初対面ですよね? 取り敢えず、挨拶からしてみっか?

 会釈してみると、向こうもぺこりと会釈をしてくる。うん、第一印象は好印象っぽい。良かったよかった、でも君達…どなた?




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