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07-16




「そいつから離れろ!」


 あんまオレの仲間に手を出していると痛い目遭うぜ!

 川瀬に集っている不良達を散らすように、バットをブーメランのように投げると、近くにいいたキヨタに川瀬を守ってくれと頼む。頭部と足をやられては思うように動けない。サポートをしてくれと声音を張った。
 
 すると川瀬がいらねぇと見栄を見せてくる。
 お前等は自分のやるべきことをさっさと働け、それこそ働き蟻のように働いて時間を稼げ。それがお前等の仕事だろ。皮肉たっぷりに言葉を返す川瀬に、キヨタは悪い意地は捨てろと苦言する。そんな体で応戦できるとでも思っているのか? だったら自意識過剰だ。
 けれども怪我人はサポーターはもう到着していると鼻を鳴らし、上体を起こす。キヨタが視線を流すと、綺麗に蹴りや拳を交わして走ってくるもうひとりの舎弟の姿。谷だ。

 ココロを連れて逃げた筈の彼がどうして此処に。
 キヨタの疑念を霧散するように、「一階も溜まっていた」だからわっざわざ隠してやったと、谷はキヨタやモトに感謝を求める。仲間でもない女の身の安全を確保してやったのだから。

「ったく、勝手にあいつが手を組めとか言ったのが悪い」

 なんで俺がこんな手間隙掛けてやらなければいけないのか。
 愚痴る谷だが、寄せ集めチームに賛同した自分も悪いかと軽く自己嫌悪を垣間見せた。キヨタは目を見開く。谷も川瀬も、モトの頼みによってチームを意識しているのか。二人は嫌々ながらも味方付いてくれているのか。
 それは自分達のためではなく、確かにチームを意識した行動。

 「千草っ」谷は負傷している舎弟の片割れに声を掛ける。そしてやられている右足を見るや否や、「お前それ…」意味深に心配の念を口にした。
 「いいさ」川瀬は足なんてどうでもいいのだと諦め気味に苦笑を零す。
 
「もう部生じゃないんだ。負傷しようが何しようが構わないだろ。アンちゃんには怒られそうだけど」
 
 まったくだと谷は悔しさを滲ませ、「よくも千草の足を」不良達にガンを飛ばした。
 これでも矢島の舎弟として名を語るための大事な商売道具だったのに。それ以上に足だけはいつだって努力し、大事にしてきたのに。なのに。
 
 そんな二人の前に立ったのはキヨタだった。
 肩で息をしながら、「よわっちいのは」引っ込んでろ、と一蹴する。

 カッチンときた谷がなんだと、と声音を上げるものの、「アンタはそいつをみてろ」これは自分の役目だと切れた口角を手の甲で擦り、生唾を飲んだ。守りながら喧嘩するなど、今の自分に芸達者なことはできない。
 
 だから守りに回れ、キヨタは谷に言うと両掌で拳を受け止め、そのまま相手の手首を掴むと、自分側に引き寄せて裏拳をかます。
 更に右隣で道具を所持している不良が勢いに任せて向かってきたため、相手の勢いを利用して突小手返し。相手の手を取り、体勢を崩させると勢いのままうつ伏せ状態にさせる。腕を捻って野球道具を取り上げたキヨタは、次はどいつだと目を眇めた。
 負傷者が出ている今、自分が率先して動かなければ。この中で手腕があるのも自分である。時間稼ぎのために進んで動かなければ。
 

「こっちもいるってこと忘れるなよ!」


 ガンッ。

 出入り口の扉をバットで叩くモトが自分の存在を忘れるなと言わんばかりに吠えると、来いと挑発して廊下に飛び出した。
 「あんの馬鹿!」キヨタは舌を鳴らす。親友は逃げたのではない。負傷者達のため、率先して動く自分のため、部屋から数を減らす作戦に出たのだ。確かに数が減ればスムーズに相手を伸せる。

 けれど親友の出た行動は危険そのもの。飛び出したモトを追えと視線でコンタクトを取るひとりの不良によって、三人が外に飛び出る。
 三人も親友の下に行ってしまうなんて、キヨタはしかめっ面を作った。モトが三人をいっぺんに相手取れるとは思えない。早く目前の相手達を打ち取ってしまいたいのだが。




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あきゅろす。
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