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07-13


 
 
 俺の彼女はわりと頑固な一面があるから困ったものだ。
 はいはい、俺の負けだよ。素直に無事を喜ぶことにするって。食い下がってくる彼女の頭を撫で、俺はお小言を止めて無事で良かったと再三再四告げる。


 一変して破顔になるココロだったけど、ハッと我に返ってモトとキヨタの危機を俺に知らせる。んでもって川瀬と谷もピンチなのだと教えてくれたために、目が点。
 なーんでそこで矢島の舎弟達が…、ゲッ、まさか三人と一緒にいる成り行き居合わせた不良って。

 引き攣り顔を作っていた俺だけど、こうしている場合じゃないと息を吹き返し、取り敢えずココロの手首を掴んで男子便所から飛び出すことにした。
 
 向こうで不良をフルボッコにしている響子さんの下にココロを連れて行き、「後は頼みます」俺は三階に向かうと彼女に告げる。
 妹分が無事だったことに安堵する響子さんは、軽く腫れた右の手を振りながら気を付けて行って来いと声援を送ってきてくれた。どんなに非力な足手纏いでも俺の思いをいつだって尊重してくれる響子さんは、密かに気付いてくれているんだろう。
 弟分のピンチに居ても立ってもいられないって、その焦燥感に。

 
 響子さんだけじゃない。

 ココロさんも、「結局ケイさんも無茶するタイプなんです」人のことは言えないと苦笑気味に護身用だと金属バットを手渡してくれた。妙に複雑な気分だけど、うん、護身用として持っておこうかな。あくまで護身用として。頭をかち割るなんて阿呆なことはしないことにしよう。
 

 ヨウ達が今、何処にいるか分からないけど、何事も頭数は多い方がいいだろうしな。
 だけど一人で突っ走ったって勝機はない。俺は助っ人にきてくれたタコ沢に声を掛けて、三階に通じる階段を駆けのぼった。タフで根性のあるタコ沢なら、きっと追い風を吹かせてくれる筈だ。
 「バットいる?」肩に金属バットをのせながら相手に尋ねると、「男は黙って拳だ」道具は論外だとタコ沢は鼻を鳴らす。まったくもって頼もしい奴だな、お前は。
 
 三階に上がると目に飛び込んでくるのは屍…、じゃね、失神している不良達。
 これを見て三人は濡れ衣を着せられたに違いない。折り重なるように失神している不良達を跨ぎ(ごめんなさい!)、通りにくい廊下を進んで俺はタコ沢と喧騒している一室に飛び込んだ。
 

 カッと目の前が真っ赤になったのはこの直後。

 心臓を鷲掴みされそうな感覚を振り切り、タコ沢よりも先に中に飛び込んだ俺は散らばっているガラス片などお構いなしにスライディング。走るよりも早いと思ったんだ。そして振り下ろされる金属バットを護身用のそれで受け止める。金属ならではの重低音な響きが金属バットを忙しなく振動させた。

「け…、ケイさん」

 掠れた声音を出す弟分を一瞥した俺は、相手を睨んで舌を鳴らす。

 

「あんたっ、よくも俺の、俺の弟分を可愛がってくれたな―――ッ!」

 




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