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01-09


 
 
「この面子なら気楽にサボれるしな。五木も一緒にサボろうぜ、真面目バッカ生きててもツマンネェだろ?」
 
 
「(少しでもヨウを尊敬しようとした俺が馬鹿だった)」

「(嗚呼、それでこそ荒川。今年は…、自分も欠課が多くなるかもしれない)」


「うっし、テメェ等。折角一緒の班になるんだし、今年は不良デビューを目指そうぜ。俺がみっちりサポートしてやる。あ、楽しそうだな。地味の不良デビュー」


 にへらへらっと笑っている我が兄貴の思い付き発言に、俺と利二は硬直した。
 出たぁ兄貴の思い付き癖、善し悪しどっちかって問われたら、後者って即答するんだぜ!

 「まずは髪染めだよな」二人ともナニが似合うかなぁ、金…、銀…、いっそウケを狙って紫…、迷うな。顎に指を絡めて真剣に悩むヨウの姿を目の当たりにした利二はそろそろーっと黒板に足を向けた。

 慌てて俺はキャツの腕をガッチリホールド。
 

「こら利二、何処に行くんだ! まさか名前、書き直すつもりじゃないだろうな? なー?」

「……。……。田山、人は誰でも自分が可愛いものだ。できることなら、人様の思い付きに振り回されたくない自分の切な心情。行かせてくれ」

「逃がさないっ、逃がさないぞ! 利二は俺と一緒に死んでくれるって信じてるっ!」
 
「田山、友を地獄へと道連れにしても良いと思っているのか?」
 
「ひとりよりもふたりで地獄! 俺は利二を道連れにすると決めた! 地味不良だろ、俺等!」
 

 「お前と一緒にするな」「するさ、お友達だもの!」「放せ田山」「死んだってヤだ!」ブンブン腕を振り払おうとする利二と、ブンブンかぶりを振る俺の攻防戦。放せ放さないの一点張りに平行線だ。
 その光景を見たヨウが、「何やってるんだよ」ガキくせぇぜ、と兄貴らしく注意。

 ピシッと硬直する俺等に、ヤーレヤレと肩を竦める始末。


「不良の俺が言えることでもねぇけど、今は授業中だぜ? あんま騒いだら先公がうっせぇぞ」
  

 途端に俺と利二はひっそりとこめかみに青筋を立てた。
 
 まさか不良に注意されるとは…、てか、誰のせいでこんなことになったとっ…、いっちゃんガキくさいのはお前の思い付き行動だろ!
 ああくそっ、こいつ、いっぺん殴ったろうかっ。できねぇけどできねぇけどできねぇけどっ、その爽やかイケメン面を殴ってやりたいぞなもし!
 
 「殴りたいんだけど」「無理だとは分かっていても、同調はする」俺と利二は軽く握り拳を作って不良をジトーッと見据える。
 「?」頭上にクエッションマークを浮かべる不良はキョトン顔で俺等を見つめ返してきた。その顔でさえ容姿端麗なもんだから、俺等は更に青筋を立てる羽目になった。怒りにプラス、嫉妬心が交じっていたことは言うまでも無いだろう。
 
 
 そんなこんなで騒動はあったものの班はスムーズに決まり、俺はヨウ、そして利二と一緒の班になった。

 女子はあんま喋ったことのない人、まったく知らない人なんだけど、男子の面子に俺は胸を撫で下ろす思いで一杯だった。気の置けない面子が一緒で良かったよ。
 利二とヨウの仲、去年に比べて格段に良くなってるしさ。
 
 まあ…、女子の反応は男子の面子に「……」だったけど。

 主に俺とヨウに「……」だったみたいだ。顔が強張っていた。
 そりゃな、噂の舎兄弟がモロタッグを組んで一緒の班にいるんだから顔も引き攣るだろ。
 

 だけど、ヨウが「宜しく」って笑顔を振り撒いたら、ちょいと緊張感が解れたみたいでぎこちなく笑みを返していた。
 
 
 り、り、理不尽だ!

 イケメンスマイルがそこまで効果を発揮するなんてっ、俺だって一応愛想良く「宜しく」つったのにっ、顔が強張ったままだったぞ!
 これがイケメンと凡人の違いなのですね、分かります。分かりますとも! けど納得いかねぇんだよコンチクショウ! 愛想よりもイケメンスマイルの方が効果的だなんてっ、なに、この屈辱と敗北と挫折感!
 
 俺の心中を察した利二が「どんまい」って肩に手を置いて慰めてきてくれたけど、やっぱ納得いかねぇ! 人は顔か? 所詮顔なのか? ハートじゃないのかよ! ハートが大事ってお母さんに習わなかったのか!


 くそう、いいんだいいんだ。


 俺には素敵な彼女さんがいるんだい。クラスメートの女子に怯えられようとも、俺にはカワユイ彼女がいるんだい。

 だからなぁ、傷付かないんだぞっ。
 ちと心に引っ掻き傷が付いただけで、別に、べつに傷付かないんだぞ! ほ、ほんとだからな! ほんとのほんとなんだからなー!
 



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あきゅろす。
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