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07-11


 
 こうして役割分担も決まり、封鎖の意味で仕切られている錆びた太いチェーンを飛び越えてビルに足を踏み込む。
 一階ですぐさま喧嘩になったのは数十秒も掛からなかった。待ち伏せていたかのように侵入者の俺達に数人の不良達が奇襲を掛けてくる。手には弥生と同じ物騒なお道具があったりなかったり。

 皆様、喧嘩は拳で語るもんじゃねえんですかねぇ!
 金属バットなんて持っちゃってっ、ストレス発散に建物の窓ガラスを壊しちゃいとか? そのまま盗んだバイクで自由を求めに走り出すとか?! ……はい、これはビバ尾崎ですね! 尾崎に共鳴した不良さん方は沢山いると思いますが、バットはボールを当てるものであって人に当てちゃならぬわぁあああ!
 
 スイングしてくるバットをしゃがんで避けた俺は、つい絶叫。


「洒落になってねぇええ―――!」
 
 
 ちなみに知っているかい?
 金属バットはジュニア野球や高校野球で主に使われているんだぞ。何故ならボールが飛びやすいから! プロが使っているバットは木製でボールが飛びにくいんだ。ザ・田山豆知識! 覚えといてくれ!
 っ、だから金属バットはボールに当てるものなんだよ! 頭をボール代わりにしたら、俺の頭は天国までホームランだっつーの! 地獄かもしれないけど!
 
 野球道具を武器にする輩を冷静に見つめるリーダーは盛大に舌を鳴らし、二階フロア組に先に行くよう声音を張った。自分達は一階の雑魚を受け持つと言い、道を作ってくれる。
 最優先に喧嘩のできないココロを助けに行けと命令するヨウは、不良達の物騒さに懸念を抱いたようだ。
 まったくもって俺も同じ気持ちだよ。弥生の持っている金属バットが可愛らしく見えるほど、敵方の持っている道具が凶器と化している。それだけ憤っているのかなんなのか、とにもかくにも殺意に似た感情を抱いていることには違いない。
 
 先頭を走る響子さんとタコ沢が現れる不良達を蹴散らし、俺と弥生が亡骸(語弊)を飛び越える。

 ココロは二階フロアの男子便所にいるとは言ったけど、無事なのかどうか知りたいところ。俺は携帯を取り出して、彼女に電話を掛ける。ワンコールで出てくれたココロは俺の心配を霧散させるように無事だと教えてくれた。が、機具越しにけたたましい音が聞こえて俺は肝を凍らせる。

 「ココロ!」階段をのぼりながら俺は彼女の安否を確認する。
 ガンッ、ガンッ、と聞こえてくる物音からしてトイレの扉を蹴られているようだ。どうやらココロの居場所が敵方に知られたようだ。キャッとココロの悲鳴が聞こえてくる。チッ、舌打ちを鳴らす俺は二段越しに段を上って先頭組と肩を並べた。
 二階にも見受けられる不良。どいつもこいつもカラフルな髪しやがってからにもう、お母さんが見たら泣くぜ!

 「ケイ。任せた!」響子さんが俺に彼女救出を任せてくれる。
 「あっちだ!」タコ沢に強く背中を押された。刹那、タコ沢は振り下ろされたバットを左の腕で受け止め唸り声を上げる。「タコ沢!」大丈夫かと声音を張る俺に、「谷沢だ!」さっさと行けと一蹴される。心配無用らしい。
 しかも弥生がタコ沢を助けるように相手の脛をバットで叩いていたもんだから(すっげぇ行動力!)、俺は大丈夫だろうと判断。
 
 一目散に廊下を駆けて男子便所らしき空間に飛び込む。
 目に映ったのはひとりの不良が最奥の個室を蹴りつけているところ。あそこにいるのか。俺は形振り構わず、相手に突っ込んだ。まさしく捨て身タックル! 相手の手腕が目測できない以上、俺にできる先制攻撃だった。

 扉向こうの人間に気を取られていた不良は俺の飛び掛りに気付くことが遅れ、一緒に転倒。
 
 「なんだてめぇ!」下敷きになった不良に睨まれて内心超ビビる俺だけど、ビビり田山になっている場合じゃない!

 ココロから不良を引き剥がすために、俺は相手と揉み合いになる。すぐに俺が扉向こうにいる仲間だと分かったのか、馬乗りになっている俺の胸倉を掴むや引き寄せてポジションチェンジ。俺は相手に押し倒された。




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