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07-10



 
 尊敬の念を抱く俺を余所に、「悔しくねぇのかねぇ?」俺なら腰抜けなんざ言われた日には喧嘩に明け暮れるけどな、とヨウは言い切りやがった。言い切りやがりましたとも。

 うんそうね、所詮お前はそういう不良だよ。俺に苦労を掛けてくれるスンバラシイ不良だよ。期待した俺が馬鹿だった。

 
 話は戻すけど、三人を襲っているのは真杉なのか?
 俺の疑問に軽くあがった息を漏らしながらタコ沢は、「可能性は薄い」と意見する。何故ならば、さっきも述べたように真杉自身喧嘩を好んでいない。仲間がやられるとまず最優先に病院に送り、仲間の身を案じる男だとか。
 ということは、真杉自身がやられている可能性がある。襲ってきているのは真杉を慕う不良達かもしれないとタコ沢は告げた。


「んーっ、まーた私怨が絡んできているってことだぽん。いや喧嘩はいつもそうだろうけど、それにしたって」


 なんかだるいよねぇ。

 息を弾ませながら気だるく言うワタルさん。
 今回はそれプラス、濡れ衣だからすったもんじゃない。こういう場合、本当は話し合いが一番だろうけど、ちょっとやそっとじゃ鎮火しそうにない喧嘩だろうし。正当防衛という言い訳で強行的に手段を取らせてもらうしかないだろう。私怨が増しそうだけど、こっちも仲間の危機に気が気じゃない。
  
 ハンドルを力強く握り締め、俺は仲間達の安否を祈る。
 いくらそこそこ喧嘩ができるモトとチーム一の手腕を持つキヨタといえども、まったく喧嘩のできないココロを守りながら大勢の不良を相手取るのは至難の業だ。ココロも身を弁えているだろうから、男子便所に隠れているんだろうけど、それにしたって三人対大勢は圧倒的不利だ。
 どんなに喧嘩の経験があろうと、強さを持ち合わせていようと、幾多の勝利をおさめていようと大勢になれば勝てない。荒川チームも過去それで敗北している。

 
 ―――…モト、キヨタ、ココロ、俺達が行くまで無事でいてくれよ。
 

 やや入り組んだ小道を進み、坂を下った先に閑寂としたアパートや空き地が見えてくる。
 全体的に物寂しい風景の一角に見えてくるビルに俺はあれだと仲間に教えた。グーグルと俺の土地勘が合致しているのならば、あのビルの中にモト達がいる。ビル前に到着すると、俺はシズを降ろしてチャリをビル地の狭い駐車場隅にとめる。
 
 「意外と距離があったな」息を弾ませるヨウに愚痴られてしまうけど(ヨウはシズによくも俺の特等席を…と唸っていた)、すぐに切り替えして二手に分かれると指示。
 手腕のあるヨウやワタルさん、シズ、タコ沢は三階フロアに行くと告げ、残りの弥生、響子さん、俺は二階フロアにいるであろうココロの救出に回ることになった。響子さんをこっちに回してくれたのは俺と弥生だけじゃもしもの時に対応できないからだろう。つくづく自分の非力を呪うけど、無いものはしょうがない。自分のやりべきことをやらないとな。
 
「うっしゃあ、待ってろよ。ココロ! 可愛い妹分に怖い思いさせた輩を叩きのめしてやるからな!」

 そう、やるべきことを…。

「私もこのバットでけっちょんけっちょんにするから! 待っててね、ココロ!」

 ………。

 ブンッとバットを振り回す弥生と、妹分を助けることに燃えている響子さんを遠目で見つめた俺は、ヨウに助っ人を寄越してくれないかと懇願する。
 
 俺一人じゃあの二人が暴走した際、止められることは不可だ。
 特に響子さん、あの人の暴走はレベル5の俺じゃ無理も無理。止めた瞬間、こっちの息の根を止められそう。
 俺の嘆きを耳にした弥生はバットで人を殴るわけじゃない、身を守るために護身として使うのだと言ってくれたけど、いや、お前…、ゼンッゼン説得力ないから。人を怪我させたら暴力を振るったも一緒だぞ。下手すりゃ少年院に行く可能性だってあるんだからな! 常識は弁えろよ!
 
 ヨウはいたく真面目に二人の暴走を心配したんだろう。
 タコ沢にストッパー役を命じていた。すっこぶるタコ沢は嫌な顔をしていたけど(タコ沢「なんで俺様なんだよ!)」、俺を助けると思って一緒に来てくれ! 絶対に女子二人の暴走は俺だけじゃ止められない!




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あきゅろす。
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