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07-07



 同時に荒川チームのひとりを連れて出入り口に駆け出した。
 既に敵はキャビネットを退かし、内鍵を開錠している。そのため廊下で待ち構えていた輩は中に侵入し、勘違いで恨みつらみを抱いているであろう荒川チームに襲い掛かっていた。人数は六、七人といったところ。到底二人では苦戦を強いられることには違いない。


 そのため川瀬が向こうに加担し、谷がココロを連れて廊下を飛び出した。
 

 幸いなことに追っ手はいない。自分とは対照的に足の遅いココロに舌を鳴らし、「しっかり走れ!」一喝して速度を上げる。
 腕を引いたまま三階から二階に移動した谷は、階段下を覗き込み、一階に敵がいることを認識する。ろくにビルの構造も分かっていない自分達を嘲笑うかのように、見張り役兼待ち伏せ役を受け持っている不良達。下におりるのは危険だろう。
 
 谷は作戦変更だと彼女を連れて通路脇に飛び込む。
 そこは男子便所、使われていない便所の最奥まで走るとココロに持っていた金属バットを押し付け、そのまま個室の鍵を閉めるよう指示した。目を丸くするココロを余所に、谷は矢継ぎ早に喋る。


「いいか。お前は足手纏いだって自覚している。だったらそれなりの行動をしろ。女が喧嘩の場にいられちゃ邪魔でしょうがない。あいつ等も俺等も動きにくいんだ。分かるだろ? だから此処にいろ。静かにしていれば、絶対に見つからない。けど用心のためにバットは護身用として持っとけ」

「谷さん…」

「ッハ、女なんて邪魔だ邪魔! 悔しいと思うなら尚更、此処にいておとなしくしろ。あいつ等を助けたい? ンなのお前じゃ無理だ。おとなしくする、それがあいつ等のためだ。……チッ、荒川が来るまでの辛抱だかんな」
 

 罵声と慰めの両方をココロに掛けた谷は、「とにかく」そこにいろよ、と言って男子便所から飛び出してしまう。
 呆然としていたココロは谷の言うことはご尤もだと真摯に言葉を受け止め、個室の鍵を閉める。バットを左の手で握り締め、生唾を飲み込んで気を落ち着けると、「足手纏いだからこそ」やるべきことがあるのだとココロは携帯を取り出した。

 右手で携帯を操作し、通話履歴から先程助けを求めた彼氏のTELを呼び出すと発信ボタンを押してコールに耳を傾ける。
 早く早くはやく、心中で早く出てくれるよう急かすココロの気持ちが届いたように、『ココロか!』彼氏の声が聞こえてくる。「ケイさんっ」出てくれたことに安堵するココロは早速状況説明に回った―――…。




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