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06-30




「―――…なるほどな、変態舎弟組も突然財布をスられたのか。オレ達と似たような境遇だな、キヨタ」

「だなぁ。変態舎弟組といい、俺っち達といい、なんかいいように動かされているというか」
 

 その場で腕を組んで状況に唸るモトとキヨタ。

 「おい」誰が変態舎弟組だと川瀬は口元を引き攣らせた。相方はそう呼ばれても仕方が無いが、自分こそ何もしていないではないか。
 そう主張すると、「俺もしてねぇよ!」谷が大喝破。事故で押し倒しただけじゃないか、と不貞腐れ顔で物申している。
 「事故でも」あれは許されないことだぜ、モトは嫌味ったらしく口角をつり上げた。「そうそう」事がケイさんや響子さんに知られたら絶対殺されるって、キヨタも同じくニンマリ。人の不幸はなんとやらである。自分達の兄分を散々毒づいた輩をフォローする気にはなれない。寧ろ、胸がスカッとしたような気分だ。

 一方、後輩二人の後ろネガティブモードを発動させているのはココロである。
 重々しく溜息をついては、「ケイさんに」合わせる顔がないと泣き言を漏らしてばかり。脱根暗をしたとはいえ一度、ネガティブになるとなかなか抜け出せないのだ。事が彼氏に知られたらケイさん、嫌わないでしょうか…、と破局まで妄想している様子。

 途端にキヨタとモトがフォローに回る。
 ココロに何か遭ったら、お局さまの怒りを買うのは紛れも無く自分達だ。特に響子は妹分の恋愛を全力で応援しているため、破局妄想を耳にしてしまったら…、血相を変えて二人は大丈夫だと口を揃えた。


「ケイさんは空よりも海よりも広い心の持ち主っスよ! 寧ろ、心配してくれますっス!」

「そうだぜ。あいつのことだから、大パニックになった後、ぎゅーっとか抱き締めたり! そのまま今度はケイがココロを押し倒したり!」


 するとココロ、少しばかり桃色な妄想をしてしまったのか、「え。あ。う?!」奇声を上げて頬を紅潮させていた。

 キヨタは目で発言者に訴える。兄分の性格をもうちっと考えてフォローしろよ、と。
 発言者は冷汗を流し、同じく目で答えた。ごめん、ちょっと誇大なフォローをし過ぎた、と。


 とことんメンドクサイ地味組カップルのフォローもほどほどにし、改めて状況下を考えることにする。


 お互いにスリに遭った。しかも同じ場所に逃げ込まれ、財布は無事に手元に戻ってきている。被害金額は零円。スリ目的ではないことくらい一目瞭然だ。

 接点の無い自分達が、何故こうして集うことになったか、相手の考えは読めないがこうしてはいられない。一刻も早く此処から出なければ。何かの罠だというくらい馬鹿でも分かる。
 



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