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06-19


 
 チームの“足”であるためにはチャリが必要不可欠。
 大抵チャリを乗り回している俺にどうしてチャリを使わなかったのか、キヨタは素朴な疑問を抱いたようだ。

 さっきも言ったけどなんとなく気分的に歩きたかったってのもある。
 たまには気晴らしに良いじゃないか。喧嘩を売られたらアウチだけど、ぜってぇ俺は心の中で泣くだろうけど、キヨタがいてくれるから大丈夫だろ。多分。

 それに俺自身も養いたかったんだ。自分の“土地勘”を。


「楠本戦でさ。俺、自分の土地勘の弱点と限界が見えたから、歩いて地元を詮索しようと思ったんだ。これが喧嘩に役立つか分からないけど、詳しくなることに損はなしな。俺、キヨタと違って肉弾戦になると足手纏いもいいところだし、こういうことでしか役立てないから」

「ケイさんの悪い癖っスよ? そーやって自分を過小評価するの。ちゃーんと喧嘩に参戦するじゃないっスか。チャリでびゅーんと皆を助けますし! んー、俺っち、チャリの腕も受け継ぎたいんっスけど、時間を要しそうっスから諦めてますっス。普通にチャリは乗れても喧嘩では活かせませんし。寧ろ怖いし」

「ははっ、俺がキヨタの手腕を受け継ごうとするのと一緒だしな。キヨタを連れて来たのは、俺と一緒に詮索してもらおうと思ったんだ。地図じゃ絶対頭に入んないと思ったからな」


 俺の言葉に、「どーせ馬鹿ッス」キヨタが膨れ面を作った。

 なんでそう結びつくよ。確かに不良達は皆、良くも悪くもお馬鹿だけど今のはそういう意味で言ったわけじゃないぞ。
 地図よりも感覚で覚えた方が効率的だって思ったんだ。例えるならそうだな…、自転車だ。乗れない自転車を乗れるようイメトレしても、実際は上手くいかないことが多いじゃんか? 道だってそれと同じで実際に歩かないと覚えないって。
 
 特にキヨタみたいな肉体派は体で覚えた方が絶対覚えが早いと思ったんだ。
 こいつは合気道を習っていたからか、スッゲェ感覚が良い。下手すりゃ俺の役目を奪われそうなほど(本当に奪われたら俺の立場って!)、実際に踏み込んだ道をすんなり覚えてくれる。ヨウもこれくらい物覚えが良かったらなぁ…、あいつは覚える気がまるでゼロだからな。

 「キヨタこっち」俺は大通りに出ようとするキヨタを引きとめて、反対側の道を指差す。
 踵返して俺の下にやって来るキヨタは、こっちは反対方向じゃないかと意見してきた。うん、確かに反対方向だ。このまま進めば反対方向に出て、時間をロスするだけだ。


「だけど道の途中に横断歩道があるから、そこを渡れば近道だ」

「横断歩道なんてありましたっけ?」

「実は最近、ここら一帯の道路が整備されたんだ。古い平屋やアパートを取り崩して道を作ったらしいから、そこに出れば文具屋への裏道に出る。時間の短縮になるってわけだ」

「へー、なるほど。ケイさんって物知りっスね!」

「両親が話していたのを小耳に挟んだだけだよ。なんでも数年前から道路整備の話が来ていたらしいんだけど、なっかなか住民が移住してくれなくて市役所と揉めていたそうな。かんなりの金を積んで解決したらしいぞ。世の中、お金なのかしら? 住み難いわね、キヨタさん」

「ふぇっ、あ、え、お、オッス!」


 あらあら、キヨタはまだまだ調子ノリレベルまで達していないみたいだな。

 ヨウなら、「あらそうね。圭太さん」って来るんだけど。
 てか、ヨウ、マジで残念過ぎるイケメン不良だよ。俺の調子ノリにすっかり感化されている面があるから。ま、女子の前じゃあんま見せないから? 結局のところ学校じゃ人気者だったりするんですけどね! どんなに悪評でも、顔の人気はパねぇんでゲスよ! いつも隣に凡人田山がいるせいで? もっとそのカッコ良さが引き立つというか?

 くっそう、イケメンなんてやっぱ畜生なんだぜ!
 一握りのイケメン達のせいで凡人の俺達が悲しい現実と向かい合わなきゃなんねぇんだからな! どーせ俺はカッコよくねぇよ! これは嫉妬だよ! 妬んで悪いか、ドチクショウ!
 



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あきゅろす。
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