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06-08


 


「フンっ、美味そうなかけうどんだな。荒川」



 犯人が鼻を鳴らしながら七味の容器に蓋を閉める。
 おーっとこの声は…、首を捻った俺は犯人を目にした瞬間、頭を抱えたくなった。「テメッ」犯人が分かったヨウは握り拳、余所ではモトの怒りメーターが上がっている。


「テメェは矢島俊輔っ…、出やがったな。クソ不良!」
  
 
 説明しなければならないだろう。
 
 矢島俊輔。今年で齢18。俺達の先輩に当たる方だが、留年して俺達と同じ学年に属している美形系不良。
 髪を灰色に染め、これまた嫉妬しそうな容姿を持っている男だというのに口を開けば残念傲慢さん。ヨウを何かと目の仇にしている厄介かつ命知らずの不良さまなんだ。一人称は“あん”と変わっている。

 更にツーンとそっぽ向いている犯人の両隣には、海のように青い髪を持った不良二名。
 短髪側が川瀬 千草(矢島のことをアンちゃんって呼ぶ)。長髪側が谷 渚(矢島のことをあんちゃんって呼ぶ)。どちらさんも矢島の舎弟だ。

 ……こいつ等は、俺の名前を騙った不良でもあるんだよな。
 できればもう関わりたくなかったっつーのに、なんで自ずから歩んでくる上に喧嘩を売って来るんだか。
 
 「よくもテメェ」憤っているヨウの怒気なんてまるで相手にしていない矢島は、フンと鼻を鳴らして肩を竦めた。


「わざわざあんが好意でかけてやったんだ。感謝しろ」


「そうだそうだ! あんちゃんは好意でやったんだぞ!」

「アンちゃんに感謝しろ!」


 ぜぇってちげぇーだろーよ。お前等。やることが陰湿ないじめに近いぞ。
 だがしかし、あくまで犯人は親切心でかけてやったと一点張り。ヨウは腹が立つと相手を睨んで、なんの真似だとクエッション。「だから親切心」何度も言わせるな、お前馬鹿だろ、ヨウに向かってすっげぇデカイ態度を取る矢島。
 ははっ、いつもながらお前、マジ最強。尊敬したいぜ、その肝の図太さ。
 
「んじゃあ、これ、テメェが食えよ。俺からの親切心だっ」

「人の食いかけなんていらん。荒川の親切心は非常識だな。あんに奢りたいなら、そこで食券を買って来い」

「テメェに常識を説かれる覚えなんざねぇぞっ。あああっ、くそっ、タイマン張りてぇならそう言え。表に出ろ!」
 

「煩いブサイク不良。貴様に指図される筋合いはない」
 
 
 うっわぁああああ、また言いやがった。イケメン不良にブサイクなんて言いやがったよ、この人!
 「ブサッ…」言われ慣れていないヨウがちょっち怯み、「ブサイク!」「ブサイク!」谷と川瀬が口を揃えて指差す。途端に椅子を倒したモトが、「ふざけるなァアア!」大喝破!
 

「ヨウさんの何処がブサイクだ! ヨウさんがブサイクなら、地球上の生物は皆、ブサイクだ! マジっ、マジ…ヨウさんに舐めたことを」


「ッハ! 荒川よりアンちゃんの方が一回りも、二回りも、三回りも上だぞ! アンちゃんは荒川にだって匹敵する手腕の持ち主だ!」

「千草の言うとおり! 俺達のあんちゃんは、誰もが羨む美貌を持っている上に優しくて頼り甲斐がある。あんちゃんほどスバラシイ兄貴はいないんだ。お前、噂によれば荒川の犬らしいな! ブサイク不良の犬は黙って骨でも齧ってな!」
 
 
「ッ〜〜〜、なんだこの腹立つ取り巻き! ヨウさんをっ、よくもヨウさんを侮辱っ、オレを侮辱しやがったなっ!」


「侮辱じゃなくて真実だよな? 渚」

「おうよ、ただ真実を述べただけだよな? 千草」





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あきゅろす。
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