[携帯モード] [URL送信]
06-06


 

「―――…ははっ、ここまで清々しく成功してくれると奢った甲斐もあるよな。ケイ」

「ほんとほんと。二人ともなっかなか奢らせてくれないから、財布を奪っといて良かったな」
 

 能天気に笑声を漏らしながらかけうどんを食べる俺とヨウ、傍ではガックシ肩を落としている我等が弟分。
 俺達の悪戯サプライズに対して罪悪を覚えているのか、それとも気を遣っているのか、安い物を言えば良かったと口を揃えている。なんだよ、俺達の奢りに不満なのか? たまにはうんっと甘えろって。お前等は年中無休で俺達を慕ってくれているんだから、これくらい当然だろ。
 最後の最後まで自分達がかけうどんを食べるからと主張してくる弟分を一蹴して、こうしてかけうどんを食べているけど、んっ、うどんウマイな。

 だけどめん類は消化が良いからすぐ腹減りそうだな。

 見越していたのか、キヨタが「焼肉一つ食べませんか?」と気遣ってきてくれる。
 確かに美味しそう。だがしかーし、俺は受け取らナーイ! だってそれは俺からキヨタへのお気持ちだから!

「大丈夫。俺、弁当もあるんだ。あ、ヨウ、お前も食うだろ? 半分しよう。今日のメニューは、あー…、ピーマンの肉詰めか。ピーマンか。俺、苦手なんだよな。ピーマン」
 
 食べられないってわけじゃないけど、ピーマンは苦っちぃから苦手だ。
 ついでに人参やグリンピースも苦手、だからミックスベジタブルは俺の敵だったりするわけだ。母さんは見た目がカラフルになるからってよく使うけど。
 「あ。これ好きなヤツ」ヨウはピーマンの肉詰めが好きなのか、さっさと割り箸でピーマンの肉詰めを掻っ攫っていく。全部食ってくれないかな、ヨウ。……しょーがない、腹減るだろうし、食うか。
 
「あ。ケイのお弁当、またタコさんウインナーが入ってる。好きだよね、ケイも」

 俺の弁当を覗き込んでくる弥生が可愛いと笑ってくるけど、これは俺の趣味じゃないからな! 母さんの趣味だからな! ……タコ沢、いないよな。リアルにあいつはタコさんウインナーを見ると激怒するから。

 キョドる俺を余所に、「ケイのおばちゃんって結構まめなんだ」ヨウが俺の母さんの話を出す。
 
「俺が泊まりに行くと、なにかと野菜がハートや星型になってたりすんだ。ははっ、おじちゃんのシチューには模った星の外枠が入ってたっけ。おばちゃん曰く、それはハズレらしい。俺のにも幾つか入ってたことがあるし」

「へえ、ケイのお母さんって愉しい人だね」


「むっちゃオモレェよ。さすがはケイの母ちゃんってカンジでノリも良いし。おじちゃんや浩介もオモレェし、俺、ケイの家族好きだな。すっげぇ良くしてくれるんだ。フツーに家族ぐるみで付き合ってくれるっつーの? 俺が遊びに行くだけでも、『え。今日は泊まらないの?』とか言われるし」
 

 ははっ、そうなんだよな。

 ウチの母さん、すぐ早とちりしてヨウの分まで夕飯こしらえてるんだ。
 遊びに来ただけだって言ってるのに、「え。嘘」泊まらないの? じゃあせめて食べていかない? ってヨウを引きとめるのがお馴染のパターンなんだよな。ヨウも人が好いから食べていってくれるし。
 これはよく泊まりに来てくれる利二やシズにも同じ事が言える。
 
 「あーあ、いいよなぁ」俺もあんなノリの良い親が欲しかったぜ。ケイの家に居候しているシズが羨ましい、ヨウは自分の家と大違いだと嘆いた。

 シズが俺の家に身を置いていることは、皆、知っている。
 近々一人暮らしすることも知っているけど、それ以上のことは皆知らないし、追究することもない。薄々何があったかは気付いているみたいだけどな。

 「シズも弁当か?」ヨウの疑問に、「そうだよ」母さんが作っていたと返答。今頃、俺と同じメニューを食しているに違いない。シズ嬉しそうだったな、「コンビニは飽きるから」だから弁当は嬉しいって笑顔を零していたし。


 ちょっとずつ元気を取り戻しているシズに俺も嬉しくなる。早く食欲旺盛なシズを拝みたいな。





[*前へ][次へ#]

6/33ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!