[携帯モード] [URL送信]
06-05


 

 閑話休題。


 二人が学食室前に到着すると、「あ。来た来た」自分達のことを待っている見知った人間がひとり、ふたり。
 度肝を抜いた二人は大慌てで彼等の下に駆ける。学食室前にいたのは、学校では有名過ぎるの異色の舎兄弟だった。自分達の兄分がわざわざ学食室前で待っていたとは! 血相を変える二人だったが、向こうは然程気にした素振りもなく挨拶してくる。


「よっ。モト、キヨタ。皆はもう中にいるぜ」

「よ…、ヨウさん。中で待ってもらっていて構わなかったんですよ」

「そうっスよ! ケイさんも、中で待ってくれていて良かったのに」


 すると舎兄弟は意味深にニヤリ。
 なにやら目論みのある顔で二人を迎えてきた。ヤな予感がするわけではないが、何かあるという予感はムンムンだ。
 戸惑っている二人に、「お前等」財布出せ、と前触れもなくヨウが命令。唐突過ぎることに二人とも目を白黒させるが、ヨウは有無言わせず財布出すよう命令。傍から見たら立派なタカりだ。

 しかし我等がリーダーに言われたら逆らえる筈もなく。
 「大した金額入ってないですけど」とモト、「千円ちょいしかないっすよ」とキヨタ、揃ってヨウに財布を手渡す。
 受け取ったヨウはニンマリと笑って、「それじゃ行くぜ」と二人を誘導。行くもなにも財布がなければ何も買えないのだが! しかしヨウはさっさと来いよ、の一点張り。後ろからはケイが背中を押してくるし。

「さっ、入った入った。ヨウを待たせると煩いぞ?」
 
 そんなことを言われても。
 渋々中に入った二人は、ヨウに手招かれて食券自販機へ。「お前等、何食うつもりだ?」前触れもない質問に、これまた戸惑いを覚えた。
 
「何食べるって…、うーんそうっスね。俺っち、焼肉定食ってのを食べようかと。カツ丼も捨てがたいっスけど」

「オレはかき揚げ定食にしようかな。サンプルを見る限り、すっげぇ美味しそうですし」

「モトはかき揚げ定食。キヨタは焼肉定食。うっし、分かった。おいケイ、キヨタは焼肉定食だってよ」
 
 ヨウは自分の財布から五百円玉を取り出し、食券自販機に投入。
 「え゛」表情を硬直させるモトの手に食券を落とすヨウは、次はお前の番だと視線をケイに流していた。「焼肉定食な」五百円玉を投入しようとするケイに、「ちょぉおおお!」待って下さいとキヨタが大慌てで兄分の腕に縋った。

「え、もしかして変更? 今なら変更も聞くけど」

「いやいやいやっ、何してくれるんっスか?! なんでケイさん達が俺っち達の食券っ…、あ、まさか奢ってくれようと」

「ポンピーン。たまには弟分に贅沢させないといけないよなーってヨウと話していてさ。まだお前達の入学祝もしてやってないし、ちっぽけだけどこれ、俺とヨウのささやかなお祝いな。お前等、財布を奪っとかないと絶対奢らせてくれないしさ」

「じゃ、じゃあああっ、お、俺っち、かけうどんでいいっス! いいっスからっ!」
 
 「うどん?」「はいッス!」俺っち、うどん大好きっス、うどんラブっス! 必死で安価なもの選ぶキヨタにケイは、うどんも美味いよなと一笑。
 食指は見事に『焼肉定食』のボタンを押していた。「うわぁああ!」高い焼肉定食を押させちゃったっスぅうう、キヨタの悲鳴なんてなんのその。ケイはお釣りを財布に入れると、キヨタに食券を手渡した。
 
 なんてこったい、新入生組はしてヤられたと動揺も動揺。
 しかも先に食券を購入していた舎兄弟のメニューに罪悪感である。


「ヨウさんがかけうどんっ! かけうどんなんてっ!」

「ケイさんもかけうどんっ…、具なしっスか!」


 ぎゃああああっ、自分達よりも安価な物を買っている!
 揃って悲鳴を上げた二人だが、舎兄弟は気にした素振りもなく食券を係りの人に渡してしまう。でもって、自分達の様子に笑声を漏らしていたのだった。




[*前へ][次へ#]

5/33ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!