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06-04


 

(ヨウさんを認めていないわけじゃないし、嫌ってわけじゃないんだけどな。あの人は本当に凄いって思っているし、ケイさんの舎兄はあの人しかいないと思っているけど)
 

 だけどなんだこのモヤモヤは。
 あの二人のバツグンのコンビネーションを知っているから、一々モヤモヤっとしているのだろうか。理屈じゃ説明のつかない感情にキヨタはまた一つ溜息。「若いなぁ」モトはキヨタの悩む姿に目尻を下げた。完全に空気は先輩後輩である。

 
「ま、ゆっくり悩めばいいじゃんか。ケイはキヨタ以外舎弟を作る気、さらさらなさそうだしさ」

「んー。ケイさんにも言われた、それ。情けないことに、チョー安心している自分がいるんだよな」

 
 キヨタは自分の器の小ささに嘆きたくなる。
 「あるある」モトはよくあることだと励まし、聞こえてきたチャイムに昼休み会おうぜ、と軽く手を挙げた。手を挙げ返したキヨタは授業の準備さえせず、ただただ地図を眺めて溜息。早く弟分から舎弟に昇格したいものだ。
 
  
 不安や悩みを抱えながら午前中の授業を真面目に過ごしたキヨタは来るべき昼休み、親友を迎えに行くために教室へと押しかける。
 授業中寝ていたのか、大欠伸をして席に着いていたモトはキヨタの迎えに「サンキュ」

 財布を持ち揃って教室を出た。
 うーんっと背伸びをして眠気を飛ばそうとしているモトは、「今日は学食に集合だってよ」話を切り出てくる。
 既にケイからメールを受け取っていたキヨタは知っていると相槌、いつもは体育館裏で昼食を食べるのだが今日は学食にしようとヨウが言い出したとか。二人にとっては学食デビューのため、些か楽しみである。
  

「普段は学食なんて全然利用しないって言っていたのにな。ヨウさん、どうして学食なんて」

 
 首を傾げるモトに、「気分転換だって」とキヨタ。
 別の場所でご飯を食べたかったに違いないと意見する。
 
「俺っち達に気ぃ遣ってくれてるのかもな。ほら、俺っち達、まだ行ったこともないしさ」

「それは嬉しいけどさ。周りの目があンのがヤだよな」

「あー分かる分かる! 学年でもさ、俺っち達がケイさん達と繋がっているって知っただけで一線引いてくるし。すっごい悪評なんだよな、ケイさんとヨウさんとワタルさん」


「ひでぇ噂ばっかだよな! ヨウさんが隣町で親父狩りをしているとか、ワタルさんが誰彼構わずカツアゲしまくっているとか、ケイが後輩相手にいびっているとか。ハジメや弥生もちょい聞くけど、あの三人は特に噂が酷いや。どんだけ悪いんだってツッコミたくなるってかさ」
 

 自分の仲間はそんなことをしないのに。
 眉根を潜めるモトは、「1年の間じゃ」ケイの噂が悪評も悪評だな、と舌打ち。理由として挙げられるのは、新入生をタカった(偽)田山圭太事件があったからだろう。すっかり1年の間では悪者だ、ケイは。故にヨウへの飛び火は凄まじい。
 「噂を聞くとさ」チラ見してくるモトに、「周りに喧嘩売りたくなるよな」満面の笑みを浮かべてキヨタは拳を作った。

「ははっ。ヨウさんが親父狩りだって。誰だよ、そんな阿呆な噂を流した奴。顔を拝みたいんだけど」

「ケイさんが後輩をいびっているかぁ。俺っち、超可愛がってもらってるんだけど」

 「ないよな」「なー?」会話を交わしながらも、二人の闘争心は沸点に達しそうである。
 噂を流した奴が特定できたら絶対に喧嘩を売ってやる。兄分馬鹿っぷりをいかんなく発揮する二人の禍々しいオーラに、周囲の生徒達が身の危険を感じて距離を置いたのはいた仕方がないことだろう。




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あきゅろす。
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