[携帯モード] [URL送信]
06-03


 

 毒づくモトにジロリと睨むが、すぐに怒りは霧散。
 

 「モトは」強いよな、とキヨタは親友の芯の強さに敬意を払い始めた。
 尊敬している兄貴に舎弟がいるというのに、二人は名コンビと称されているのにも拘らず、立派に弟分をしているのだから。対して自分は名コンビに焦燥感やら嫉妬やらなんやら。日に日に兄分の存在が遠いものに感じるのだ。
 
 ああ見えて、自分の兄分はチームを陰から先導している存在。
 全面的にリーダーや副リーダーがチームを先導しているのだが、彼等が見落としてしまう小さな変化は舎弟が拾ってフォローをしている。特に良し悪し関係なく直球型のリーダーのフォローは巧みだ。文句垂れながらもリーダーの本来の力を発揮させるために、いざとなったら持ち前の洞察力をフルに使う。戦力外ではあるものの、チームの要的存在だ。

 そんな兄分に果たして自分は見合えるのだろうか、不安は募っていくばかりだ。
 

「ヨウさんとケイさんって異色だけど…、めっちゃイイコンビじゃん。学校一緒になって、それがより分かっちゃったし。俺っちなんかが、ケイさんの舎弟になれるのかな。モトの方が合ってるんじゃないかなぁ。モトって、ケイさんに対してズバッと意見できるだろ? 俺っち、萎縮しちまうし」

「そりゃお前とは見方が違うからな。オレはヨウさんに、あんま意見できないし…、オレとケイは好敵手だぞ? 分かってるだろ?」

「じゃあ俺っちの好敵手はヨウさんだろ?! っ…、無理だ、勝てない。あの人のカリスマ性はピカイチなんだから!」


「だよな! ヨウさんはカッコイイし! ……あっ、いや、今のはナシナシ。お前の事を応援していないわけじゃないんだぞ、キヨタ」


 どーんと落ち込むキヨタに、「オレだって」未だに嫉妬しているよ、モトは自分の心情を教える。
 兄分を尊敬しているが故に、ケイには毎度の如く嫉妬しているし、敵視するところも何処かである。溢れ返る羨望がそうしていることも自覚していた。今でこそ大人しくはなったけれど、ふとした時に棘のある物の言い方をすることがある。突っ掛かることもある。気に食わないと舌を鳴らすことだってある。

「で、自己嫌悪すんだよ。なにしてるんだオレ…ってさ。ケイのこと、嫌いじゃないのにキッツイ言い方しちまってさ。あいつは全然気にしていないみたいだけど、発言したオレの方が『今のはマズったかも』って気まずくなるんだよ」

 例えばキツイことを言ってあからさまショックを受けたような顔を作ってくれたら、「あ。今のは言い過ぎた」って謝れるじゃんか?

 けどさ、ケイって言われ慣れているのか、それともオレの性格を熟知しているのか、何を言っても大体ノリで受け流すんだよ。
 今のは流石に傷付けたんじゃないかなって自分で分かるくらいキッツイことを言った後でも、わりとへらへらしているっつーかさ。態度で示してくれた方が気が楽なのに、態度で言わないからオレはますます気まずくなって。
 
 だからって今の傷付いたか? って、聞くのもおかしいだろ?
 ……器がでかいって言ったら癪だけど、ケイって打たれ強いんだよな多分。毒舌の波子の一件でよーく分かったし。まあ、毒舌の波子のことはブチギレていたけど。
 
「キヨタだけじゃないって、兄分弟分で悩んでるのは。オレもこう見えて、未だに悩むことがいっぱいだ」

「モトは舎弟になりたいとか思わねぇの?」

「んー、無理だって分かってるんだ。ヨウさんの舎弟はケイしかいないって思ってるし…、キヨタの言葉を借りるならヨウさんの前じゃあオレ、萎縮しちまう」
 
 ふーん、鼻を鳴らすキヨタはやっぱりモトは凄いと思った。
 潔く弟分のままでいようとするその姿も、兄分の舎弟を受け入れる姿勢も、自分の非を認める姿も。自分ならば何もかもを相手のせいにしてしまいそうだが、モトは謙虚に兄分の舎弟を受け入れて、仲間だと思っている。昔のように兄分の舎弟のことで文句垂れることもなくなった。

 あの頃、最初こそヨウが舎弟を作ったことに、モトはあれやこれやそれやどれや何かとイチャモンを付けていたというのに。
 認めないとまで断言していたというのに。


 今はこうして相手を受け入れている。





[*前へ][次へ#]

3/33ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!