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傍迷惑な奴等、再び!


 
 ◇ ◇ ◇


「―――…はぁ、どうしようモト。全然無理なんだけど、俺っち」
 

 1年2組の教室にて。
 重々しく溜息をついたキヨタは、人の席を陣取って攻略本を読んでいる他クラスのモトに本音を漏らす。
 スーパーファミコンと表紙に表記されている古い攻略本を読み耽っているゲーマーはあーうんうんと生返事。すっかり攻略本に夢中らしい。「モート!」俺っちの話、聞いてるか! 声音を張れば、煩いなと嫌々モトは顔を上げた。
 

「なんだよキヨタ。無理なら無理でやめりゃあいいじゃんか」

「そんなことできるわけないだろぉおお! おぉおお俺っち、これでも期待されてるんだぞ!」


 「じゃあ頑張れって」投げやりな声援を送るモトが攻略本に視線を戻してしまう。
 
 なんて薄情な奴だ、親友がこんなにも困っているというのに。脹れるキヨタは目を通していた地元の地図に視線を落として溜息。
 キヨタは今、地元の地形をお勉強している真っ最中だった。本来ならば地理系など絶対に触れないキヨタだが、今のキヨタにはどうしても触れなければならない理由がある。―…そう、キヨタは兄分と崇めているケイの長けた土地勘の“後継者”に値している人物なのだ。
 いつか必ず舎弟にすると断言したケイは、己の持てる土地勘の知識をキヨタに託そうとしている。当然、期待されているわけだから嬉しい他ならないのだが。だが、

「ゼンッゼン覚えられねぇや。どーしよう。ちょっとくらいケイさんの役に立ちたいのに」
 
 紙上の地形はまるで頭に入ってこない。
 ぐったりと机に伏せてしまうキヨタを見かねたのか、「あのなぁ」すぐに覚えられるわけねぇだろ、モトは攻略本を閉じて肩を竦める。
 
「ケイの土地勘は長年の経験から出来上がってるもんじゃんか。合気道を習っていたお前の手腕と一緒だって。ケイも、最初からぜーんぶお前に知識を託そうとしているわけじゃないだろ?」

「そりゃそうなんだけどさ。俺っちの取り得って言ったら、結局手腕だけじゃん? 喧嘩しかできないし」

 おい、お前、それ嫌味かよ。
 モトは口元を引き攣らせた。なにぶん、モトも取り得といえば喧嘩。なのだが、遺憾なことに並の手腕である。キヨタと比べたら天と地の差がある。なのに、嫌味とも言える遜(へりくだ)った物の言い草。頭に拳骨をかましたくなる。

 イラッとしているモトに気付きもせず、「焦ってるのかも」キヨタは頬杖をついて弱音をポツリ。
 

「俺っち…、ケイさんに見合おう見合おうと焦ってるんだ、きっと。ケイさんってさ、超男前じゃん?」

「そっか? ヨウさんには負けるんじゃね?」


「それにいざって時は頼れるし」

「ははっ、ヨウさんには負けてるし」


「優しいし、気遣えるし、周りの空気も読めるし」

「ヨウさんに負け負けもいいところだけどな!」


「……、モト、喧嘩売ってるのか?」

「だーってオレ。ヨウさん一筋なんだぜ? そう言われてもピーンと来ないって。オレにとってケイはただの調子ノリだし、弱いし、だけど負けず嫌いだし。……ちょっと自分を過小評価しているところもあるよな。仲間に一線引くところもあるし、そこがめっちゃ気に食わないんだけどさ」





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