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01-02




 おっと“舎弟”と単語を出した時点で簡単に説明しなければなるまい。

 
 さっきもチラッと出したとおり、俺は一年の時に、とある事件、いや不慮の事故? とにもかくにも事故もどきを起こして、タコ沢(谷沢元気)をチャリで轢いちまい、キャツに絡まれていたヨウを助けた。
 ちなみにヨウの本名は荒川庸一。学校一恐れられているヤンチャ坊主アンド、イケメン不良だ。

 ヨウの美貌はなかなかのもので、女子達には黄色い悲鳴でキャー! 男子にはドチクショウめが、と舌打ちされる容姿を持っている。
 俺は勿論ヨウと同性なわけだから後者の反応をするぜ!

 で、話は戻すけど偶然の偶然にもヨウを助けちまった俺は、後日体育館裏に呼び出されて、あいつからお礼を言われた。
 不良のクセにヨウは義理と人情を大切にするんだ。てっきり俺はリンチにでもされるかとっ、ゴッホン! …失敬、ま、とにかくヨウに呼び出されて簡単に会話。不良とか地味とか抜かして、性格的に馬が合った俺達は一緒に下校。


 んでタコ沢に再会しあれやらこれやらそれやらでドタバタドタバタ…、喧嘩に巻き込まれちまった俺はヨウに気に入られて、成り行きなんちゃって舎兄弟を結んだ。
 
  
 そっから話は長くながーくなるわけだけど、いろーんな喧嘩に巻き込まれた俺は不良達と出逢い、仲間になって、対峙している日賀野達と一悶着も二悶着もあって、ついには奴等と手を組んで対峙する原因を作った五十嵐って不良を伸した。ぜーんぶ俺が高1の話だ。
 簡略的に説明するのは簡単だけど、中身は随分濃かった。1年の時に一生分の青春を費やしたんじゃないかってくらい濃かった。
 
 最初こそ俺は不良の舎弟になったことに嘆いて、どうやって白紙にしようかと毎日のように悩んでいたわけだけど、今じゃそれも良き思い出。
 二、三回、舎兄弟の危機は訪れたけど、俺は今、正真正銘荒川庸一の舎弟として毎日を過ごしている。ヨウの思い付きで舎弟になっちまったわけだけど、そのヨウと俺は今、一番仲が良い。不思議な縁だよな。
 


 さてと、説明も此処までにして。
 


 くっそうっ、俺が喧嘩できないことを知って追い駆け回してくれるのか、お前!
 田山いじめは良くないんだぜ! 俺を倒したところで、自慢どころか、経験値アップにもならないんだからなー! 俺の弱さ知ってるだろ? 知らないなら見せてやるぜ、俺の喧嘩ダメダメな実力を! ガッカリしても俺のせいじゃないんだからな!
 

 ふぅー…、馬鹿なこともほどほどに…、真面目に逃げねぇとやっばい!
 朝から俺、何カロリー消費してっかなぁ! 今日の朝食のトースト、既に胃の中ですべてエネルギーになっちまってる気がする! ちなみにトーストに付けたのはバターなんだぜ! 即エネルギーになりそうっぽいだろ!

 
 脇見で走っていた俺は咄嗟に教室に駆け込む。


 そこは二年の教室、でも他クラス。
 何事だって一斉に視線が飛んでくるけど、ええいこの際無視! 視線か、自分の命か、選ぶならぜぇえったい自分だろ! 俺、自分が超可愛いから! ナルシストではないが俺は俺がだぁあい好きなんだぜ! てか、俺超大事!
 息をつく間もなく、俺は追っ駆けて来るタコ沢が視界に入って急いで目の前の扉をスライド。うっし、閉めればこっ「ガンッ!」…ちのものでもなかったぁああ!
 
 
 閉める前にドアを抉じ開けてくるオッカナイ不良さんに、「ゲゲゲッ」俺は悲鳴を上げつつ、急いでBダッシュ。


 だけど、「ゴラァア。逃げられないんだぜ」制服の襟首を掴まれて、ズルズルと廊下に引き摺りだされる。
 マジでやっばっ、万事休すっ! いやいやいやっ、俺は負けないっ、負けてたまるか! フルボッコなんてヤーンなんだぜ、フルボッコはトラウマなんだぜ、俺! どっかの誰かさんにフルボッコされた心の傷がまだ癒えてない! ということで慌てて俺はドア枠に縋った。


「貴様っ、ケイ! 往生際が悪いんだぜゴラァア! なんで勝負しねぇんだ!」


 地団太を踏むタコ沢だけど、なんでって理由なんて一つしかないだろ!


「俺は喧嘩できないっつーのっ! 知ってるくせに喧嘩吹っ掛けてくるなんてタコ沢…っ、見損なったぞ!」

「ッハ、俺は超優しいと思うぜ? 何故なら、お前等舎兄弟にどーんな雪辱を味わわされたとしても、正々堂々真っ向から勝負を吹っ掛けてるんだからなー? 本来なら不意打ちを吹っ掛けてもおかしくない数々の雪辱。だが“卑怯”なんざこのタコ沢…ッ、ゲッホン、谷沢さまの辞書にはないんだぜゴラァア! てことで、ケイ、観念して勝負しろ!」

 



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あきゅろす。
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