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05-09


 

 と。


「アイッヅっ!」  


 思い切り脛を蹴られて俺は悲鳴を上げる。
 よそ見してるんじゃないと馬場さんに叱られてしまった。
 
 くっそう、毒舌に加えて暴力女か? だったらお前、十二分に不良の素質あるよ! 不良の舎弟が言うんだから間違いない!
 

「だいったい田山! あんた、なんで高校の書道部に入ってないわけ?! 高校に進学したら絶対、書道部に入りなさいって言ったわよね!」


 これっぽっちも記憶にございませーん。
 入る入らないは俺の勝手じゃないですかー。

 ははっ、第二の俺はいつでも最強! 表の俺は黙って聞くだけっ、超ヤサシー!


「書道部に入っていたら、あんたの天狗になっている鼻をへし折ってやるのにっ! いい? 此処には地区の書道大会が開催されているのよ? あんただって知ってるでしょっ、なのに、なにぃいいい!」
 
 
 ということはなんですか? 貴方様は書道部に属していると?
 なら良かった、俺は今後とも書道部に入ることはないので。貴方様がいると知った以上、絶対の絶対に入らないからな、俺!
 
 てか、あんまり俺の悪口言わないでくれよ。
 過剰反応する奴が倉庫にいるんだから。ほっら見ろよ、あそこで苛々しているわんこを(キヨタ「あいつっ。ケイさんの悪口を悪口を悪口を」)。今にも食って掛かりそうだ。頼むから抑えてくれよ、キヨタ!
 
 俺を愛してくれるのは嬉しいけど、めんどくさくなるだけだから!

 
「で、結局何の用? 俺、もう習字をする気もないから、こっちとしては馬場さんの勝ちでいいんだけど。習字の話ならお断りだよ。お断り」

「はあ? 勝ち逃げする気? あんた、サイッテー!」


 ………、なんでそうなるかなぁ。
 ガックシ肩を落とす俺を余所に、堤さんが目を丸くして落胆の声を上げた。

「え、えぇええ。た、田山先輩。習字、もうやらないんですか? 毛筆も? あんなに字、上手だったのに!」

「うん、俺が最後に筆を触ったのは中二だし。もう丸三年も筆を触ってないから腕も落ちているよ。なに? 会いたいってやっぱり書道関連?」

 俺の問い掛けに堤さんが小さく頷く。
 実は習字を頼みたかったのだと話を切り出してきた。曰く、堤さんと馬場さんは他校の書道部に属しているらしい。各々書道活動に勤しんでいるらしく、今度地区の合同書道展覧会があるらしい。どこかのビル会場を借りて、各々高校から決められた作品数を出展しなきゃいけないらしいんだけど。


「私のいる書道部。人数が三人しかいなくって。しかもひとりは幽霊部員、だから実質二人でしているんです」





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