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05-08


 
 尤も会いたくなかった馬場さんと、まったく接点のなかった堤さんのご登場に、逃げ腰の俺は仕方がなしに行動を起こす。

 逃げていても一緒だよな。無視なんてこんな状況下じゃ無理だし。はぁ、ほんっと天下の荒川チームのたむろ場まで乗り込んでくるなんて、こいつ(と堤さん)は度胸があるな。

 おっもい足取りで、ある程度の距離を保ちつつ、チームメートの注目を浴びつつ、俺は出入り口の枠に寄りかかって二人に久しぶりとご挨拶。

 「うっさいわよ」このヘボ山、毒づいてくる馬場さんはうぇっと俺に舌を出してきた。


「いつ見ても余裕そうな面してるわねっ。なによ、たかが毛筆と硬筆の級がアタシよりも取るのが早かったからって! ヘボよヘボッ! こんな奴にいっつも負けていたなんてっ、クソ野郎!」


 ………、これだもんなぁ、この人。

 俺が先に級を取ったことを根に持ってる。

 ほんっと中学卒業以来の再会だけど、ちーっとも変わってない。腹が立つくらい変わってないよ。
 マジ男だったら拳骨の一発でも入れたいところだぜ! でも相手が不良なら無理なんだぜ! それが田山圭太っ、いつだって平和を愛するジミニャーノのポリシー! ……という名の自己防衛! 無闇に殴ったりはしません! というか人は殴ってはいけません!
 
 小さく溜息をつくと、「余裕ですか?」また余裕ですか? え、田山クン、と一々突っ掛かってくる。

「あんた、噂には聞いてるわよ。不良のパシリになったんですって? ははっ、あんたならナリソー。ウケる。ナニ、そのピアス。ちっとも似合ってないわよ」
 
 ははっ、うっるせぇよ。
 噂を鵜呑みにしている毒舌様に、俺の何を知ってるんだベラボウのドチクショウ! ついでにピアスはヨウが無理やりあけやがったんだよ!
 取り敢えずやんわりと、二度言うけどやんわりと、「舎弟だよ」と訂正をいれてみる。「出た。うざいノリデスネ」そんなノリ、イラナイ、嘲笑してくる馬場さんに、表の俺は愛想笑い。内心ではお前も大概でうぜぇ! こりゃノリじゃなくて真実だ! と吠えています、俺。

 やっぱり溜息しか出ない俺に馬場さんが舌打ち。


「二度と会いたくなかったわ。ムカつく」


 おやおやまあまあ、随分嫌われましたね俺も。じゃあ会わなかったらいいじゃないかと内心で反論。
 俺も貴方様には是非ともお会いしたくなかったですし? まったくもって苛々するっ、毒舌の波子め…、俺の器が大きいことに感謝しろよ!

 てか、用がないなら帰れっつーの!

「一生パシられてろ、ヘボ!」

 ……、よーしよし、よく堪えた俺。もう十分だよな?


「馬場さんが俺のことを嫌いなのは十二分に分かった。話がないなら俺、戻る」


 枠から体を離して、俺は踵返そうとする。
 途端に「あ。ま、待って下さい」堤さんが俺の腕を掴んできた。ごめんなさいごめんなさい、繰り返し謝罪してくる堤さんは馬場さんを睨む。 

「波子先輩。あんまり田山先輩に気に触るようなことを言わないで下さいよ。頼み難いじゃないですか!」

「気に触る? アタシ、本当のことを言っただけだし?」

「もぉおお波子先輩!」
 
 早々と田山圭太は現実逃避をし始めたぞ。焦点が宙を漂っているぞ。若干こめかみに青筋も立っているぞ。

 わぁい、向こうには俺の天使が心配そうな眼でこっちを見てくれている。なんで俺の彼女はあんなに可愛いんだろう。目前の毒舌女とはエッライ違いだ。同じ女の子なんだろうか?

 嗚呼、俺、そっちに戻っていい? ココロに癒されたーい! 後で抱き締めて良いかなぁ。




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あきゅろす。
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