05-07
「すみませーん、田山圭太くんって此処にいると聞いたんですけど」
そう、キャツが自ずから俺に会うために、わっざわざ荒川チームのたむろ場までやって来たのだ。
三日後の放課後のことだった。
いつものように他校のココロ達と合流して、和気藹々と皆で駄弁ったり、ゲームしたり、数人は出掛けたり、思い思いの時間を過ごしていると招かざる訪問客がやって来た。
皆が皆、誰だろうと顔を上げ、名指しされた俺は相手を見やって絶句。
嗚呼、眩暈がしてきたぞ。
だって出入り口に佇んでいるのは白々しい微笑みを浮かべている疫病神、じゃね、噂の毒舌の波子さま。
ロングヘアをひとつに束ねて先端だけゴムで縛り、前髪を黒ピンで留めている彼女こそ俺の尤も会いたくなかった女の子だ。他校生を主張しているモスグリーン色のブレザーを身に纏った女子高生は努めて愛想よく、「田山くんいます?」と不良達に声掛けをしてくるけど、俺は身震いして倉庫の四隅へ。
さっさと窓辺に近付き、恐る恐る窓の鍵を解除し「あ、いますね。お久しぶりです田山クン」
!!!
み、み、見つかった。
ぎこちなーく視線を流す俺は出入り口で手招きしてくる悪魔、じゃね、毒舌の波子に愛想笑い。「人違いです」ボク、山田です、窓を開けながら返答。
途端に毒舌の波子は表情を変えて、「調子乗って誤魔化してんじゃないわよ」あんた、相変わらず馬鹿なノリしてるのね、このヘボ! と毒づいてきた。
化けの皮が剥げたことによって彼女の毒舌が証明されたと言えるよなっ! チックショウ誰がヘボだっ、お前こそ俺とおんなじ平凡女子じゃないかっ、こんのヘーボ、へボ子!
あくまで内心で大反論。
表向きじゃ誤魔化し笑いの一点張りだ。反論したら絶対、向こうの顰蹙を買う!
「あはっ。お久しぶりです、田山先輩!」
んでもって、なんと毒舌の波子にはお連れがいたようだ。
馬場さんの背後からひょっこりと顔を出し、ヒラヒラと手を振って「お久です」と敬礼してくる元気の良い女の子に(あ、響子さん達と一緒のセーラー服。彼女達と同校生か)、俺は数秒間を置いて記憶のページを捲る。
んでもってああ、思い出したと俺は独り言を零した。
あの子は習字教室で一緒だった堤(つつみ) ひなのさんだ。
ショートカットでちみっこい身長をしている。ココロと同じくらいの身長っぽい。
えーっと、確か俺の一つ下だったな、まったく喋ったことはなかったけど。
……ほんと、これっぽっちも接点なかったよな? 俺と堤さん。フレンドリーにお久しぶりですっつー関係でもなかった気がするんだけど。だからか、挨拶をされて違和感バリバリ。
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