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05-06




「めっちゃ怒ったんだよ、馬場さん。『勝ち逃げする気でしょ。あんた。ざけるんじゃないわよ』とか言われてさっ…、どんだけ敵視されていたんだろ。俺」

「それって好意じゃねえの?」


「絶対にないからっ、鳥肌が立ったじゃんかよっ! ……ヨウも多分俺達のやり取りを見ていたら分かるけど、あれは好意の『こ』もない。それに馬場さんは彼氏がいたからな。キッツイ性格なのになんで彼氏がいるのか、俺には男の気持ちが分からん。
やっぱ俺は優しい子がいい。ココロが天使に見えるほど、馬場さんの性格は鬼だ鬼。悪魔、大魔王、地獄の死者。ほーろーべー!」


「どんだけだよ。あ、ココロに連絡したのか? あいつ、テメェの発狂を気にしてたぞ」

 
 兄貴の助言に、「この話。全部ココロにしてるよ」昨日の夜、電話で話したと俺は肩を竦めた。発狂はしておいてもちゃんと彼女の事は考えているんだぞ、俺。
 ココロって人三倍言動に気を付けないといけないデリケートな子だから、不安にはさせないよう気は配ったつもり。ココロ自身だいぶん強くはなってるんだけどな。ふっとした拍子にネガティブな気持ちが出てくるから。自称根暗って言っていただけあるよ。

 まあ、電話の様子からして、泣き言を漏らす電話の俺に始終オロオロ困ってくれた挙句、励ましてくれたから信じてはくれているだろう。
 
 はてさて、それにしてもこれからどうするかね。
 浩介の伝言では“会いたい”って内容を承っただけで、他に何も聞かされていないそうな。困ったなぁ。浩介の話によると、キャツは高校に進学してから習字をやめたそうだ。だったら向こうも習字の縁は無くなっただろうに。
 
 どんより落ち込む俺に、「まあさ」嫌なら徹底的に無視しとけばいいんじゃね? ヨウがシケた面すんなと柔和に綻んできた。

  
「シケた面ばっかだと楽しくねぇだろ? 気楽にいこうぜ。らーくにさ」

「是非とも俺とポジションを交替して欲しいよ。マージ、気楽にいきたい。……、そういえばさ、シケた面と言えば、最近シズ、元気ないよな。いつもどおりっちゃ、いつもどおりなんだけどさ」


 俺はふとした疑問をヨウにぶつける。
 
 意味深に吐息をつくヨウも気付いていたみたい。
 シズのことで会話をもっと会話をしたかったけど、「荒川、田山!」体育教師に怒鳴られたから、サボりは敢え無く終止符を打つことになる。ダルイと舌打ちをするヨウを宥めつつ、俺は腰を上げて舎兄と一緒に体力測定に戻った。
 
 毒舌の波子問題を余所に、俺は気掛かりを抱いていた。
 微小の変化だけど、最近シズの元気がないんだ。よく食べてよく寝る不思議ちゃん、食べ物に関するとすこぶる饒舌になる我等が副リーダーの元気が最近ないように思える。本人は至って普通にしているし、話している間はこっちも普通だと思えるんだけど、なんか雰囲気がな…。

 ただの気のせいだと良いんだけど、仲間をよく見ているヨウが気付いているんだ。こりゃあ俺の気のせいじゃなくなってきたかもな。


 不安や憂慮を交えた複雑な気持ちを抱きながら日々を過ごすこと三日。
 まるで嵐の静けさのように何事もなかった三日後に事件は起きた。




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あきゅろす。
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