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05-04


 
 いつしかライバル視してくるようになった彼女は、何かしら俺にイチャモンはつけてくるわ。命令口調で物申してくるわ。毒づいてくるわ。

 俺、習字以外は並な奴なので? 
 テストを返されたりしたら、いっつもテストの点数を盗み見ては「ヘボッ」と毒づかれましたよ。


 ええほんと、マジな話。


 うわぁああああ思い出しただけでも腹が立つっ…、チクショウな奴だった!
 何度心中でドチクショウ! こっちも反論したろうか! と思ったか!
 
 ……まあ現実、口論はした事がない。
 だって面倒になるし、俺自身平和を愛するジミニャーノだったし、男女が喧嘩したら絶対女に味方が付くし。
 

 はっきり言って俺はこいつから嫌われていたし、俺もこいつを尤も苦手と称していた女の子。
 犬猿の仲まではいかないけど、好いている類には入っていない。ぶっちゃけ嫌いな類に入る女の子だったわけだ
 人間誰しもそういう奴っているだろ? 日賀野以上にある種、こいつは俺の苦手な奴かもしれない。日賀野はフルボッコ事件がなかったらトラウマほどにはならなかったけど、こいつの場合は何度か接していくうちに“苦手”だと認識したわけだし。
 
 くそうっ。
 習字は辞めたし、各々別の高校に進学したんだから、二度と関わることもないだろうって記憶上から抹消していたのに、していたのにっ! 


「なんだよあいつっ、今更俺に会いたいとかどの口が言ってるんだよっ。畜生ッ、毒舌の波子めっ。あんの悪霊! 疫病神! 田山の敵! 塩、誰か俺にお清めの塩っ! あいつに関わったら最後、災難しか降ってこないっ…、俺が嫌いなら関わってくんなよっ。これなら日賀野と会った方がマシっ、だ!」

 
 翌日の体育時間。
 
 体力測定をしていた俺は持っていた握力計を壊れんばかりに握り締める。
 「うっわ。48」結構いったな、ペアのヨウが握力計の針を見て口笛を吹いた。去年が確か40だったもんだから、これは自己ベスト新記録だ。どんだけ俺、握力計に力を籠めてるんだろう? いや気持ち的には壊してしまいたいくらいに興奮しているんだけどさ。
 鼻息を荒くする俺はヨウに握力計を押し付ける。舎兄はあっちゅう間に50を超えていたけど、驚くことなかれ。

 だってこいつ、すこぶる喧嘩強いもん。
 俺より握力が下だったら、こいつ本気でしていないな? ってフツーに疑うし。

 「にしてもよ」体力測定用紙に測定結果を記入したヨウは、気ダルそうに次はシャトルランか、と吐息をついて俺を見やってくる。
 
「ケイがそこまで拒むのも珍しいな。テメェってどんな奴でも大抵、お得意の調子ノリで受け流すだろ? 苦手なヤマトだってノリで流してるだろうが」

 面白半分に聞いてくるヨウ、俺は脹れ面を作って返答する。
 

「日賀野は嫌味を吐きながらもノリを受け止めてくれるじゃんか? けど毒舌の波子の異名は“調子ノリキラー”。つまりノリを斬り捨てられるんだよ。だから俺や浩介、健太が苦手にしててさ」


「ああ、なるほどな。そりゃあテメェ等にとって辛いわけだ」





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あきゅろす。
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