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04-31




「―――…あら、誰か。此処を訪れたのかしら?」
 
 
 看護師は病室で点滴のパックを変えながら、その部屋の変化に気付き、首を傾げた。
 
 二時間ほど前にはなかったベッドテーブル上に、封の切られていない煙草が置いてある。
 誰が置いて行ったのだろうか? ご家族ではなさそうだし、患者の友達だろうか? うん、きっとそうだろう。彼の見舞い客はまさしく“不良”という輩が多かった。きっと見舞い客のひとりが置いていったに違いない。

 それ以上、看護師は気にする事無く、点滴を変えてしまうと機敏な動きでレースカーテンを閉める。けれど窓は開けておいた。空気を入れ換えるために。

 
 
 同時刻、とある不良は路地裏を訪れていた。
 
 生臭く湿っぽい路地裏にジベタリングをし、煙草をふかす彼の銘柄は未だに目を覚まさない患者と同じ銘柄。
 物思いに耽りながら不良は、ぽっかりと見える青空を見上げて紫煙を吐いた。「阿呆が」毒づいた台詞は紫煙と共に空気に溶けていく。


 にゃあ。
 

 と、路地裏を通り過ぎる黒猫が不良を警戒しているのか、それとも何か他に思う点があるのか、こちらに向かって鳴いた。野良猫のようだ。
 不良は息をついて、こっちを見つめてくる猫に苦笑。「てめぇも野良か」俺も野良だ、んでもってあいつもノラ、嗚呼、路地裏は野良の宝庫かよ、不良はおどけ口調で肩を竦める。


「んっと、野良なんざロクなのがいねぇ。馬鹿だ、ノラは」


 泣き笑いする不良に黒猫は興味を失ったのかその場から去ってしまう。
 空に視線を戻した不良は、「本当に馬鹿だ」どいつもこいつも馬鹿だ、甘ったれで馬鹿ばっか、そう吐き捨て煙草をふかす。



 彼の持ち前の髪の色、見事に染まった紫は微風によって靡いている。
 
 


To be Continued...



 
2012.01.02



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