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04-28


   

 けど降りられねぇんだような、俺はリーダーだから。

 
 「ムズカシイな」ぼやく浅倉に便乗し、「ほんとにな」ヨウは同調を示した。
 浅倉は続け様に、「どっかで」これで良かったって思う自分もいる、と吐露する。それはどういう意味か、ヨウが横目で浅倉を見やる。「もしも」浅倉は宙を見つめながら煙草を銜えた。


「楠本と蓮が逆だったら、多分おりゃあ心底楠本を恨んでいたに違いねぇ。俺はもうヤなんだよ、でぇじな舎弟になんかあるの。懲り懲りだ。
―――…だからどっかで榊原を恨む気持ちを抱いていたりするわけだ。分かり合いたい一方、蓮や仲間達を引っこ抜いた行為は未だに許せないでいる。傍で支えてくれた涼や桔平がいなかったら、それこそ感情のままに暴走していたかもしれねぇ。楠本のように」

 
 俺って馬鹿だから、すぐに感情的になっちまう。下手すりゃ楠本のようになっちまうんだろうな。
 「他人事には思えねぇ」浅倉の独白に近い吐露に、ヨウは間を置いて煙草を吸う。複雑な念が胸を占めた。

「チームメートに順位付けなんざしたくねぇが、きっとおりゃあ涼や桔平、そして蓮に何かあったら、暴走しかねない。誰よりも傍で支えてくれる奴等だって知ってっから。ま、その時は誰かが俺の馬鹿な行動を止めてくれるって信じてるけどな」

「………」


「おめぇも気ぃ付けろよ、荒川。俺とおめぇの性格、似てるから暴走しかねないぞ」

 
 揶揄してくる浅倉に、「余計なお世話だっつーの」素っ気無く一蹴するが、強くは反論できなかった。可能性は大だ。
 というか過去に仲間が目前でヤラれた光景を目にして、身勝手な行動を取った記憶がある。反論すらできなくなった。

「浅倉、舎兄弟っつーのは不思議だよな」

「ん?」

「俺等も然り、テメェ等も然り、榊原達も然り。なんっつーか…、舎兄弟を結ぶとダチじゃねえ、仲間でもねぇ、兄弟でもねぇ、なんか別の関係が築き上げられる。今、俺は舎弟がいない日常を想像することすら無理だ。いて当然だからな。舎兄が消えちまった楠本が怒れちまったのも、分かる気がする」

「ははっ。おめぇ等はマジ仲が良いからな」

「その舎弟が、自分の舎弟を作っちまう日も近いんだ。しょーじき複雑なんだよなぁ。ケイの奴、しっかりキヨタを“後継者”扱いしてやがるし。地元で有名な“異色の舎兄弟”はいつかあいつ等の代名詞になっちまうかも。うっわ鬱…、分かるか? 俺の気持ち」


「なんでい。おめぇらしくもねぇ、嫉妬か?」
 

 「かもしんねぇ」ヨウは正直に暴露して笑声を漏らした。
 “異色の舎兄弟”は俺達しかいねぇって思ってるからな、こうして複雑な気持ちを抱くのかもしれない。「モトの気持ちがよく分かるぜ」俺、もっとあいつを大事にしよう、ヨウの心境を聞いた浅倉も笑声を漏らして目尻を下げる。
 
「名コンビになればなるほど、おめぇ等も大変だな。まどろっこしいなら、おめぇがキヨタって坊主を舎弟にしちまえばいい。おりゃあ、二人舎弟を作ってるが問題なんて起きたことねぇぞ」

「んなことしたら、弟分のモトも舎弟にしないとなんねぇだろうし。なにより二人ともそれは望んじゃねぇんだ。モトはあくまで俺の弟分を望んでいるし、キヨタはケイの舎弟を望んでいるからな。んー、複雑なオトメゴコロだな」

「……、おめぇはいつからそんなにノリの良い奴になったんでぃ」

「これは舎弟の影響」
 
 あいつといると嫌でも調子に乗っちまうぞ、ヨウは満面の笑みを浮かべて見せる。
 憮然と紫煙を吐く浅倉は「その舎弟は?」と尋ねてきた。「そういうお前こそ初代舎弟は?」質問を返して、意味深に笑みを深める。お互いに舎弟が何処にいるのか、なんとなく想像は付いていた。これも奴等の舎兄だからだろうか?
 



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あきゅろす。
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