04-17
「っ、しまった!」
武器にも防具にも対応できる鉄パイプを蹴り飛ばされ、それを手放してしまった。
隙を逃さず自分の胸倉を掴み、ストレートを食らわせてくる敵側。容赦なく羽交い絞めにされてしまい、蓮は油断した悔しさを噛み締めるようにギリッと奥歯を噛み締めた。
抵抗する前に痛烈な右左フックを食らわせてくる敵に、慈悲は存在しないようだ。
蹴りやフックの連続攻撃に口内だけでなく口角も切ってしまう。「いってぇ」漏れる本音にせせら笑うような飛び蹴りを鳩尾に食らい、蓮は今度こそ両膝をついた。
呼吸も儘ならぬまま痛みに耐える一方、向こうの鉄パイプが頭上目掛けて振り下ろされる。
「蓮さん!」仲間の悲鳴がやけに遠くっ…、カツン。
と、状況には相応しくない小さな金属音が聞こえた。
「アイテッ」鉄パイプを振り下ろそうとしていた相手の顔面に空き缶が当たったらしく、敵はかるくでこを押さえている。肩で息をしながら蓮は空き缶が飛んできたであろう方角を見やった。
「悪い清瀬、待たせたなっ! テメェ等、援護に回れまわれ! グズグズすんな!」
現れたヨウ達に蓮は胸を撫で下ろすような気持ちを抱いた。
これで仲間達はどうにか助かるだろう。他の仲間達が自分達を守るように援護に回ってくれるのを脇目で見ながら、「マジ悪い」蓮はヨウの肩を借りて体を起こした。予想以上に遅れてしまった、顔を顰めるヨウに気にしていないと蓮は微笑する。
それでも顔を顰めるヨウは、決まり悪そうに蓮にだけ遅れた理由を耳打ちした。
「実はな。道、間違えたんだ」
「え?」
「いやマジ悪い。ケイをちゃーんと後ろに乗せてはいたんだけどさ。どーもバイクってのが俺達、慣れていなかったみてぇでさ。あいつの道案内と俺の運転、上手く噛み合わなくって」
ははっ、意思疎通できなくて道、間違えちまった。
ごめんごめんと軽いノリで謝られ、蓮は暫し絶句する他ない。
「しかもケイの奴」バイクに酔っちまったんだ、軟弱だよな、明後日の方向に視線を泳がせて敵の拳を受け流すヨウ。実は自分の荒運転によってケイが酔ったとは口が裂けても言えなかった。
そのケイはと言えば、路地裏手前の大通りにいるとか。
酔ったからそこに留まっているわけでなく、他のチームと連絡を取り合い、奇襲返しの情報を整理しているらしい。
「どっこも苦戦しているみたいだ。あいつ等、楠本直々の知識によって土地を熟知してやがるから」
こっちが奇襲攻撃を返しても、体勢を整えるために一旦引いて入り組んだ路地裏に逃げちまうんだ。
おかげさまで今、隊長(ケイ)は引っ張りだこだ。連絡が間に合わないから俺の携帯を使って、あっちこっちに指示を出している。見るからにパンク寸前だったみてぇだけど、あいつなら乗り切れる。俺の舎弟だしな。
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