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04-16


 
 勢いづいた鉄パイプが仲間に翳された。
 「市川!」混乱した隙を突かれ怯んでいる仲間の下に駆けた蓮は、振り下ろされる鉄パイプを自分の鉄パイプで受け止める。が、横から顔面ストレートとおまけの飛び蹴りまでは対応が出来ず、蓮は路地裏の汚らしいアスファルトに転がった。
 

「れ、蓮さんっ!」

 
 庇われた仲間の声により、呻いていた蓮は体勢を整えようとするが、踏みつけられそうになる靴底が見えて素早く寝返りを打つ。
 手放していた鉄パイプを手に持ち、相手の脛目掛けた。骨を叩きつけるような音と震える振動が手の平から腕、そして自分の脳みそに伝わってくる。大ダメージを与えたようで、敵側が片膝を抱えてしゃがみ込んでいた。さすがは弁慶の泣き所。
 
 その隙に市川と呼ばれた仲間が相手の顔面に右フックを食らわせて助けに来てくれた。
 「大丈夫ですか?」前に立つ市川に、「俺より野村を」あいつは目をヤラれた、と守るよう指示。自分は大丈夫だから、一声に市川は向かって来る不良の拳を手の平で受け止め、腕を引っ掴み、鳩尾に蹴りを入れる。そして一目散に視界を奪われている野村の下に駆けた。


「あっはっはっはっ。苦戦してるな、蓮」


 ちょっち用意した人間が多かったか?
 あくどい笑みを浮かべる見物客を見上げ、「うっせぇよ」蓮は口の中に溜まった唾をアスファルトに吐く。赤く染まった唾に、蓮はやっぱり口内が切れたと呻いた。今しばらくは食事に苦労しそうだと苦言を漏らし、上体を起こす。


(思っていた以上に辛い状況だな。荒川さん達はまだかっ)


 メールが来て五分程度、だろうか。
 
 時間は掛からせないとヨウは断言してくれたし、今回の総指揮官(リーダー)ケイもお得意の土地勘をいかんなく発揮すると言っていたが。この調子だと十分は掛かるかもしれない。目安はメール新着五分だったのだが、残り五分。持たせるには並々ならぬ気合と根性がいる。
 人数は増えていくばかりだし、仲間内は動揺と混乱を隠しきれていないようだし、口の中は痛いし。
  
 困った状況だと他人事のように考えながら、飛んでくる蹴りを避けてボディーブロー。
 すかさず別の相手から蹴りを頂戴してしまうが、怯まず後ろ回し蹴りで応対した。

 ぽつり、頬に液体が付着する。
 最初こそ敵の体液かと思ったが、どうやらこの液体は曇天から落ちてきたようだ。降り出してきたらしい。


 ぽつり、ぽつり、と小粒が頬を叩いてくる。

 
 曇天から雨天に変わる空の下。
 未だ高みの見物を決め込んでいる楠本を一瞥し、蓮は焦燥感を抱いていた。一分一秒がやけに長い、早くヨウ達が来てくれなければ仲間達がヤラれてしまう。数メートル先で聞こえた仲間の悲鳴に、蓮は次第次第に気が焦っていく。

 助けに行きたいが自分も目前の不良相手に手一杯だ。このままではヨウ達が来てくれる前に、こっちが全滅してしまう!




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