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04-14



【駅周辺
  路地裏一角(担当:蓮)】
 
 
 ヴー。ヴー。ヴー。
 
 
 制服のポケットに突っ込んでいる携帯が低く唸り、小刻みに震え始める。それはまるで、これから起こる出来事に対して警鐘を鳴らしているよう。三通ほどメールをくれたらしく、同じ現象が三度繰り返された。今頃、自分の舎兄や副リーダーにも同じ現象が起こっていることだろう。
 蓮はケイに見るよう言われたその土地の広さ、建物等の障害物、脇道に目を配りながら決戦の時を待っていた。

 急速に口内の水分が消えていくような気がする。緊張しているのかもしれない。
 ―…いや、思った以上に緊張している。手腕有無関係なく、自分はやって来るであろう楠本達に一匙の畏怖を抱いているのだ。やはり片隅で怖いと思っているようだ。情けないことに、人に強く怨まれ、裏切り者と罵声を浴びせられることがとても怖い。
 
 「蓮さん?」聞いてますか、仲間から声を掛けられて蓮は我に返る。
 どうやら物思いに耽っていたらしい。いつの間にか、自分はその場から逃げるように路地裏を突き進んでいた。苦笑を漏らす蓮に対し、何も知らせられていない仲間はキョトン顔で首を傾げてくる。


「隈なく路地裏を調べないと、浅倉さんに怒られますよ。今回の喧嘩はいつも以上に気合を入れないといけないんですから」

「ああ、分かってるって。和彦さんは負けず嫌いだし、荒川さんにも手助けしてもらっている。負けるわけにはいかないよな」


 そうだとはにかむ仲間は、「あの舎弟さんの助言ですと」まずは道の広さを調べるんでしたよね、と話を切り替える。
 相槌を打ちつつ、蓮は何も知らされていない仲間の仕事熱心な姿に胸が痛んだ。

 この作戦は危険を被(こうむ)る。
 
 向こうチームのインテリ不良に告げられた。
 それは自分達中心人物がオトリになることもそうだが、何も知らされずオトリにされる仲間もまた危険。チームの中心達だけが作戦の真意を知り、水面下で動いている。作戦が漏れたら最後、チームの輪が乱れる危険性もハジメは指摘してきた。
 
 荒療治な喧嘩の終決ほど、途中の過程の基盤が弱い。
 漏えいも懸念されるだろうし、ばれた以降のことを思えば危険な作戦だと案を出す際釘を刺してきた。最悪、チームの中心達は仲間を信用していないのではないかと疑念を向けられる可能性があるから。
 
 ぎりぎりの作戦だと脅されてしまったが、舎兄は二つ返事でその案に乗ると告げた。
 喧嘩に対してリスクを負うのは仕方が無いことだし、今の状況では仲間達に真実を告げたところで動揺を起こすだけ。だったら作戦を決行し、一刻も早く喧嘩を終わらせることに専念したい。仲間を守れる最善の手ならば、それに縋りたいのだと舎兄はのたまっていた。


 しかも、
 
 
『おりゃあ、仲間から恨まれたり、去られたり、見切られたりすることには慣れているしなぁ。ま、仲間を守れるならなんでもするさ』


 ―――…だったら自分だって、居場所を再びくれた仲間達に自分だって。





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