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04-12


 

「思惑通り、楠本は浅倉さん達の動きを察知し、各々三つに力を分割して各々のエリアに向かっている。楠本はよっぽど荒川チームが邪魔だったみたいだ」
 

 俺達と常に行動しているチームの中心人物が連日少人数で動くと知るや否や、大きな動きを見せ始めたよ。

 そう説明するとハジメは意味深に息をつく。「楠本は何処のエリアに?」質問に、「蓮さんエリア近くだ」俺は赤ペンで丸を描き、駅周辺を大きく囲った。
 ここ数日、俺達は浅倉チーム・荒川チームに分かれて俺の指示する土地を視察している。理由としては奇襲返しのために手分けして手頃な土地を探すため、だ。奇襲を掛けられた前例があるから、単独行動は控え、少人数多チームで動こう。そうすれば向こうの奇襲攻撃もかく乱する事ができる。
 表向きそういった理由で行動を起こしていた。水面下ではどうやって楠本を誘き出すか、念入りな作戦が立てられている。

 その作戦が今、こうして実施されていた。
 わざと楠本の嗜虐心(しぎゃくしん)を煽るために極力“エリア戦争”時代からチームの中心だった浅倉さん、涼さん、そして楠本の尤も憎むべき相手・蓮さんの三人を軸に各々エリアを設けている。

 常にこの三人が浅倉チームの土地視察に先立って動いてもらっているんだ。
 俺達とは別行動で、しかも人数は手薄。“廃墟の住処”を守らなければいけないから、人数は削減せざるを得ない。連日同じ状況が続いたら盗聴役も願ってもないチャンスだと親玉に報告するだろう。中心人物達を伸せばチームの主力の要は失うのだから。


 案の定、楠本に連絡して向こうチームは動き出している。


 今頃、楠本達は有頂天になってるんじゃないだろうか? 警戒心の強いチームだから、あくまでこれは可能性であり俺の憶測に過ぎないけど。
 
 話は戻り、オトリになってくれている浅倉さん達を余所に、俺達は奇襲攻撃返しの返しの返し…、あー取り敢えず奇襲返しを決行しようとしていた。
 浅倉さんがこいつ等なら絶対に裏切り者はいない。そう信じる“エリア戦争”を共にした仲間達を“廃墟の住処”に配属しているんだけど、実はその仲間達、桔平さんを筆頭に俺達のたむろ場に待機。ヨウ達が各々引き連れる援軍だったりする。

 勿論盗聴役のことは伏せていた。
 混乱を招くだろうし…、それにハジメの考えでは三人のどれかにくっ付いて動きを把握するんじゃないかと推理したから。

 そして今、荒川チームは合流した向こうの仲間と共に俺の指示待ち。
 俺の指示次第、楠本達とは別の道を使って仲間と合流・援護。一気に奇襲返しを成功させる。


 そう、俺は今この作戦の指揮官(別名:隊長)だったりするんだ。


 だぁあってヨウが思いつきなのかなんなのか、有無言わせず俺を指揮官に抜擢してきたんだもんっ。浅倉さん達も躊躇なく俺を信じてきてくれたもんだからさ! うわぁあああ胃が痛いっ、痛くなってきたぁああ! ……だったりする。
 何度も言うけど、まーじ俺はプレッシャーに弱いタイプなんだよな、こんな大役とかマジっ、勘弁だって。
 けど長けた土地勘を持っているのは俺だから、田山圭太は腹を括ってやらなければならない。やらなきゃいけないんだようっ、くそうっ、胃が痛い。

 俺のプレッシャーの弱さを見越して、ヨウがリーダーって呼びそうになったから「隊長で!」と止めたんだけど、結果がこれ。


 トホホだ畜生。





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あきゅろす。
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