00-02
「不良二人の名前は――もう分かっているな?」
それまで語り部になっていた男は、流し目で相手を見やる。
「んー」
生返事をする相方は、次の瞬間「あああっ」間の抜けた声音を出してガックシ肩を落とした。彼の目の前には散らばったトランプたち。トランプタワーが崩れたことに嘆いていた。
悲しそうにトランプを掻き集め、けれど声音は「名前を知らない奴はいないっしょ」ウッキウキとしていた。
「地元の学生さんならだーれしもが知っている名前だって。ぼくもそこまで疎くはないんだぜ? ふふっ、五十嵐を伸した不良達か。突撃攻撃型不良の荒川庸一に、頭脳派守備系不良の日賀野大和。とてもとてもとつても興味深いね。ご挨拶してみたいけど、さあてどうしようかなー」
「なにを考えているんだ。どーせ、ろくでもないことなんだろうがな」
男の問い掛けに彼は、
「そーんなに褒めるなって」
語尾にハートマークをつけて舌を出した。
クスリと笑声を漏らし、彼は散らばったトランプの中から、お気に入りのひとつである一枚を取り出し、端を銜えた。
「まあ、今はおとなしく計画を練るだけにしておくよ。せっかちに動いたら、それこそろくでもないしね。まだなあんにも、それこそ始まりのスタートラインにすら立ってないんだし。ねえ? まずはスタートライン、何事も土台が大事だ。土台作り、そこからだ。ゆっくり狩っていこうぜ」
銜えたトランプの柄、スペードのキングは妖しく、そして何かを予感するように沈黙を貫き通していた。
to be continued...
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