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04-09

 


「いるって知っただけでも儲けものだ。それに無闇に犯人探しなんざしてみやがれ。チームは動揺して秩序が乱れる。今、こうして動揺するのは俺達で十分だ。頭の俺、副の涼、舎弟の蓮と桔平だけで今は十分だとおりゃあ思うぜ。…荒川、おめぇ等のしようとしていた作戦は続行可能か?」


 視線を投げてくる浅倉さんに、「どうする気だ?」ヨウは間を置いて相手の意図を尋ねる。

 間髪容れず浅倉さんは返答する。わざと自分達の行動や情報を流させて、向こうの思惑通りにし、奇襲を仕掛けてくる相手を迎え撃つ、と。ただしオトリ組と奇襲返し組の作戦を決行する場合、オトリ組は全面的に浅倉チームが。奇襲返し組は荒川チームが受け持って欲しいと意見した。
 何故ならば盗聴者は自分達のチームにいる。それは間違いない。だったら盗聴者のいない荒川チームに奇襲返しの件は任せるのが適任だと浅倉さんは考えたみたいだ。

 それは一向に構わないと生返事するヨウは、やや承諾しかねている。
 

「企てていた作戦は、ケイとタコ沢のタッグでなきゃなんねぇ。少数で動くのがベストなんだが…、こいつ等は決行早々危険な目に遭った。チームのリーダーとしては、あんまこの作戦の続行は望みたくねぇ。危険過ぎる」
 
「ヨウ。俺達チーム内のみで伝達し合って行動すれば、多少の危険は回避できるんじゃないか?」

「確かにテメェの意見はご尤もだ、ケイ。だけどな、既に楠本は俺等の動きで薄々何をしようとしているのか、いや分からなくとも自分達にとって好からぬことをしようとしていることは勘付いている筈。次、行動に起こしてみろ。徹底的に潰されかねないぞ。俺はなるべく仲間を危険には曝さしたくねぇんだよ」

「分かるけど、でも多少のリスクは必要だろ? 今までの喧嘩だってそうだったじゃんかよ」

「私怨は喧嘩と暴力の境目を見失いやすい。下手すりゃテメェ等は病院送りだ」


 相手は憎悪を抱いている輩、手加減という三文字はないだろう。
 
 苦言するヨウは、「忘れるな。ケイ」テメェの身の程を、と自分の手腕のことをしっかり釘刺してくる。べつに蔑んでいるわけじゃない。ヨウにはヨウの、俺には俺の得意不得意分野がある。ヨウはそこを弁えて欲しいんだろう。厳しく指摘してくる。
 分かってはいるけど悔しさを味わってしまうのは俺の性格上の問題か? 俺は複雑に理解を示した。
 
 軽く判断を渋っているヨウに、「やっぱり盗聴者を探すべきじゃ」桔平さんが横から舎兄に意見する。
 確かにチームは動揺するかもしれないが、こうも身動きが取れないのは痛手。リスクも高過ぎる。仲間に疑心を向けるのは居た堪れないが、此処は一つ災いの目は摘んでおくべきではないか。二代目舎弟の意見に浅倉さんは首肯しない。
 「一々疑いたくねぇや」傍から聞けば投げやりな物の言い草だけど、彼は言葉を重ねる。仲間に疑心を向ければ向けるほど結束は崩れ、チームメートは離れていくような気がする。


「なんつーか、あれだな。信じる方が疑うよりも気が楽なんだ。盗聴している輩がいたとしても、おりゃあチームを信じていきたい。ま、輩がいるのはしゃーねぇし、利用するだけ利用するって戦法でいこうや」


 おりゃあ、裏切られることに対して傷付いたとしても、仲間を信じていくような戦法でいきたいんだ。
 
 ニッと笑う浅倉さんは、次いで「疑うっつーのはアタマいるしなぁ」俺には不向きだと大袈裟に肩を竦めてみせた。
 呆れる涼さんと桔平さんだけど、各々この人らしいと微苦笑を零していた。蓮さんは、なんだか泣き笑いしている。なにか思う点があったみたいだ。

 「てことで」荒川、どうにかして続行を許可してくれないか、片手を出して頼んでくる浅倉さんの軽いノリにヨウは溜息をついた。
 

「あのな、浅倉」

「分かってるって! なるべく危険はこっちが買うつもりだからさ。ちょっちおめぇ等お得意の知識を貸してもらったら、こっちで頑張るから。その土地勘と、あー、不良の情報網を掛け合わせた知識、俺達に分けてくれるだけでいいんだ。現地には俺達が行くって」

「いや。それも無理だろ…、ケイとタコ沢がタッグを組んでこその作戦だ」

「んじゃあ、護衛つける。それでどうだ! 蓮とか強ぇぞ、実力は俺のお墨付きだしな。な? 蓮」

「え…、まあ、それなりには」
 
 
「だから…、これは少数で動くのがベストなんだよ、浅倉。清瀬じゃあ目立つだろうしな。楠本直々に来ちまうぞ。奇襲戦法なのに、下準備もなく奇襲でも掛けられたら」


「危険を買うって点なら、それ、使えるかもね」

 
 それまで黙っていたハジメが口を開いた。
 「そっちのチームが」危険を顧みないというのなら一つ案があるよ、真顔で語り部に立つ。案を出すハジメの声音によって、室内は静寂に包まれていった。




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