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04-08

 

 長引かせるイコール、考えて動かなければならない。
 
 なにせ頭が頭脳派ではない、地道なんて深慮な行動がリーダーにできるわけがない。一々台詞に棘を含ませるシズだけど、ヨウは眉根をつり上げているけど、ご尤も。両者瞬発力のあるチームだ。持久戦は不得意も不得意、長引かせるのは不味い。
 あーだこーだ話し合っているうちに手詰まりを感じてきた俺達は、ホトホト困り果てていた。


 どうする、どうすれば、この事態を……。

 
 ふと隣室からどよめきが聞こえた。
 
 なにやら不良達の声々、タコ沢やキヨタの喚き声じゃない。驚き慌てふためいている騒々しい声が無数に聞こえる。何事だと俺達が視線を投げた矢先、扉が開かれた。絶句。だってそこに現れたのは自宅に帰った筈の重傷者。
 ドア枠に寄りかかりヘラヘラと笑って、「おっす」心配掛けたな、今戻ったと能天気に片手を挙げてくる。
 

「か、か、和彦さんっ?! な、なんで此処に!」


 蓮さんの素っ頓狂な声に、「なんでって」頭に包帯を巻いた浅倉さんは大袈裟に肩を竦めてみせた。

「おりゃあリーダーだぞ? 長期不在はやばいだろ? 今回の喧嘩の中心指導者は俺じゃないといけねぇのに、荒川にバッカ押し付けても申し訳ねぇしな。イケメンに美味しいとこばっかヤレねぇっつーの」

「だ、だけど頭を縫ってッ…」

「言われるほど大した怪我でもないんだって蓮。負傷した仲間達は各自家に帰したが、おりゃあヘーキもヘーキ。これでも頑丈だからな。ま、立ち眩みはするからソファーに座らせてもらうけどな。うーっし状況から説明してもらおうか。今、どうなってるべ?」
 
 軽いノリで心配をあしらう浅倉さんは、近場のソファーにどっかりと座り込んだ。
 扉が開け放たれた向こうからは心配の眼が多々飛んできたけど、「でぇーじょうぶだっつーの」シッシと浅倉さんはその心配を手であしらう。後でちゃんと報告するから今は荒川と話させろ、なーんて言って扉を閉めさせた。
 
 物静かに閉められた木製の扉に視線を投げて、どいつもこいつも大袈裟だと肩を竦める浅倉さんは早速状況を尋ねてくる。ヨウには騒動と不在だったことを詫びて。
 リーダーとしての責任をしっかり背負っている浅倉さんに、なんとも言えない顔を作っていたヨウだけど軽く説明を始めた。
 心配の念を向けるよりも、状況を説明してやった方が彼のためだと思ったらしい。同じリーダーとして気持ちが分かったんだろうな。

 事情を聞いた浅倉さんは一つ小さな吐息をつくと、「頭いてぇなソレ」置かされている状況を嘆いた。自分が数時間不在の間にそこまで濃厚な出来事があっていたなんて、呻いてこめかみを擦る。
 「つまり」チームに盗聴役が存在していて、向こうに情報が漏えいしていると? そのことで悩んでいると? 確認の意を込めて尋ねてくる浅倉さんにヨウは返事をした。自分達の起こした行動をしっかりと説明して。
 
 なるほどな、微苦笑を漏らす浅倉さんだけど然程ショックは受けていないらしい。
 意外だった。仲間を第一に想う浅倉さんのことだからてっきりショックを受けると思っていたんだけど。
 
 浅倉さんは失敗に終わっている俺達の作戦と、状況下を反芻し、少しばかり口を閉じて思案。意味深に宙を見つめて、腕を組んでいた。程なくして、彼は意見する。「盗聴役は問題視しねぇ」と。
 
 驚かされたのは俺達だけど、浅倉さんは構わず言う。情報を流したければ流すだけ流させればいい、と。
 情報はあくまで間接者を通した情報に過ぎない、一見不利な状況とも言えるがそれを逆手に取ってしまえば、こっちが優位に立てる可能性だってある。情報で相手を揺さぶる事だって可能だ、と浅倉さんらしからぬ知的な発言。

 「ですけど」チーム内に裏切り者がいるのですよ、探さなくていいんですか? 桔平さんの意見にも彼は動じず言葉を返す。




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あきゅろす。
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