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04-07



 有無言わせず、ココロは俺から離れて隣室へと向かう。
 向こうからはまだタコ沢とキヨタの喚き声やら怒号やらなんやら、本気で喧嘩し始めてるんじゃないよな。あいつ等。
 それにしてもンマー、ほんっとココロさんは舎弟の彼女として頑張ってくれていますね。よく意見もするようにもなったし…、自分に自信がつくって良いことだと思うよ。うん。
 
 ただちょっと残された俺は居た堪れないぞ。
 
 気恥ずかしいというかなんというか、ええい、皆、そんな意地の悪い眼で俺を見るな! 見せ付けた気分になるだろ! べつにそんなつもりはちょっちもないんだからな! ああっ、蓮さんまでそんな意地の悪い目で俺を見なくてもっ…、うわぁああ! 蓮さんだけは俺の味方だと思っていたのに!
 でも俺ってば超幸せ者とか思っている残念彼氏だよ、残念田山でごめーん!


「あーあ。相変わらずテメェ等、クソ甘いぜ」
 

 ヨウの茶化しに咳払い。
 空気を誤魔化した俺は、ハジメにジャージを貸してもらうことにする。着替えないとココロに叱られちまうしな。ココロに強く言われると、何も返せなくなるんだよ俺。

 俺がイソイソと四隅で着替えている間(脱ぎにくいのなんのって)、話は戻ってこれからのことについて検討される。
 楠本の目論見なのか、俺達は下手に動くことも、仲間内に事情を明かすことも出来ない状況に追い込まれてしまった。動けば動くほど情報が敵側に漏えいされて自分達の首を絞めかねない。
 慎重に尚且つ迅速に事を対処していきたいけれど、真っ向勝負が得意な直球型チームの荒川・浅倉チームにとってこの行動は不得意なこと極まりない。
 

「いまりこんちゃうなこつは思いたくなかばってん。犯人だっち思われる可能性っちしてから考えられるんな、“エリア戦争”以降に入った仲間ばい。
(あまりこのようなことは思いたくないけれど。犯人じゃないかと思う可能性として考えられるのは、“エリア戦争”以降に入った仲間だろうな)」

「ま、そう考えるのが妥当かもしれないよな。楠本は“エリア戦争”直後、廃人だったって聞いていたし」


 副リーダーの涼さんが方言で喋っているというのに、桔平さんは当たり前のように言葉を返していた。チームメートパワーってところだろう。
 俺的には「同じジャパニーズですよね?」とツッコミたいところだけど。
 

「犯人探しをするしかないのか…。だけど、そうこうしている内にも楠本の振る舞いはエスカレートしていく一方だ」

「そいはがとかっちいるけん、蓮。ばってん犯人ん一件ば差し置いて行動しゅるなんていまりにも危険とよ。
(それは分かっているんだよ、蓮。だけど犯人の一件を差し置いて行動するなんてあまりにも危険だ)」
 

 涼さんの意見に、「それも分かってるんだよ」だけど過激化している楠本を見過ごすことはできない、蓮さんは台詞に焦燥感を含せて反論。「そげんゆーても」犯人の一件は見過ごせないだろ、と涼さん。「だから」このままじゃ楠本にヤラれていく一方だ、と蓮さん。
 なんだか分からないけど口論になりそうだったから、やんわりハジメが二人の間に割って入った。
 

「優先順位を付けるべきだと思うね。どんな行動を起こしても、必ずリスクというものが浮上してくる。多大なリスクを背負って勝利を掴むか、それとも最小限のリスクで地道に勝利を掴むか、これからの行動がすべてに物を言う状況さ。
僕としては最小限のリスクで地道に勝利を掴んだ方がいいとは思うけれど…、喧嘩は長引こと間違いなしだよね」

「ふぁ〜…、ハジメ…、自分はその意見に反対だ。長引かせる喧嘩は…、双方チームにとって不得意なこと…、極まりない」
 




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