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04-05



 
 取り敢えず俺達が無事だと察したヨウは、何があったのだと俺達に問う。


 そしたら、
 

「タコ沢が川に落としてきたんっス! 俺っち、こいつに殺されかけました!」
 
「状況を回避するために川で泳いだだけだゴラァア! おかげで携帯が死んだっつーの!」

 
 はい、同着返答。
 よってヨウがもっと混乱したのは言うまででもない。可哀想に、事情も知らず支離滅裂な説明じゃ混乱するのも無理はないよな。
 
 何を聞いても喧嘩に結び付けようとするタコ沢とキヨタ。
 そうなれば、ヨウの聞く相手は自然と冷静を欠いていない奴に目が向くわけで。「ケイ」どうなっているんだと説明を求めてきた。ゲンナリと肩を落とす俺は、重たい腰を上げて向こうで説明するからと隣室に向かう。此処じゃ二人が喧嘩をしていて煩い、そう言ってヨウを誘導。
 
 その際、がくんと足が崩れそうになったために、四隅で心配の眼を向けていたココロが駆け寄って来た。
 体を支えようとしてくれる彼女に、「サンキュ」俺は一笑して、ちょっち肩を貸しててもらえるかと申し出る。「濡れるけどいい?」そう付け加えて。

 純粋に役立てることが嬉しいのか、彼女は小さくはにかんで頷いてきた。
 
 こうして俺は彼女の肩を借りながら隣室へ。
 中に入ってくるメンバーと室内にいたメンバーに目を配り、向こうから聞こえてくるタコ沢とキヨタの声に耳を澄ませる。かんなり声のボリュームが大きくて、扉を閉めてもヤンヤンギャンギャンと喝破が聞こえてきた。うん、これならいいだろう。
 メンバーもヨウを筆頭に副リーダーや向こうの副リーダー。舎兄弟組に、こっちの頭脳派とココロがいるだけだ。チャンスは今しかない。
 
 
「ヨウ、すんげぇ不味いことになったかもしんねぇ」


 俺は事情を聞いてこようとするヨウに、まず結論から述べる。
 瞠目するリーダーに、「キヨタとタコ沢はわざと喧嘩してくれている」だからあいつ等の喧嘩は嘘だと暴露、すべては説明するチャンスを作るためだと顔を顰めた。
 
「チャンス。ですか?」

 それってどういうことです? ココロが俺の顔を覗き込んでくる。
 
 説明役に抜擢された俺は(あんまこの役回りはしたくなかったんだけどさ)、まず自分の任務の報告をした。
 結果は惨敗、俺もタコ沢も発って早々奇襲を掛けられた。自分の任務をこなし時間なんて爪先もなかったと告げ、真っ当できなことを真摯に謝罪。次いで執拗に追い駆け回されたこと、逃げ惑っていたこと、そしてタコ沢の考えを順序良く説明していく。
 
 最後にあくまで仮説だと付け加えて、自分達の身の上を報告した俺は聞こえてくる二人の喧嘩に耳を傾けた。

「俺達は高架橋から飛び降りて川に逃げた。そこから大回りして、此処まで戻ったわけだけど、途中追っ手に見つかって全力疾走していたんだ。ヨウ達に連絡できなかったのは、些少の嫌な可能性に懸念を抱いたから」

 あんまり浅倉さん達のチームメートの前じゃ言いたくないけど、俺達の受けた奇襲は出来過ぎていたんだ。
 あれほど注意を払っていたにも関わらず、俺とキヨタなんてパッと見地味そのもののナリにも関わらず、暮夜の刻に迷う事無く奇襲を掛けてくるなんて出来過ぎている。


「申し訳ないことに、ほんっと何も出来ないまま、駅に到着して間もなく奇襲を受けちまってさ。タコ沢も散々追われちまってさ。どうにか合流はできたんだけど…、散々だったよ。ごめん、ヨウ。あそこまで啖呵切っておいて」

「馬鹿、テメェ等が無事でなによりだ。下手に深追いしなくて良かった。テメェ等の選択は賢かったよ」
 




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