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信じて傷付いた方がいい




   
「―――…おいケイ! キヨタ! タコ沢! テメェ等っ、無事か。おい返事しやがれ!」

  
  
 うわぁい、沢山の人間が俺達を見下ろし、声を掛けてくれている。

 えーっと人間がひとり。ふたり。さんにん。
 なんだか沢山の人間が集まってきたなぁ。すっげぇ。しかもみーんな不良だ。目に沁みるヘアーカラフル。ふっ、人間に見下ろされる蟻の気分が今なら分かるんだぜ畜生。俺達は蟻、人間を見上げている蟻さんだ! 皆、俺達を踏み潰さないでくれよな!


 ……駄目だこりゃ、調子ノリも空回りしている気分だ。
 

 ゼェハァと息をついて呼吸を整えている俺達は各々体を起こされる。
 リーダーが率先して声を掛けてくれるんだけど、俺達はそれに答えたいんだけど、ちょ、まずは休息をください。喋る力もないくらい、俺達マラソンをしてきたんです。ほんとやばい。死ぬかと思った。体力が根こそぎ奪われた。まさかのハプニングだった。
 
 おかげさまで体はびしょ濡れだけど、酷い水分不足に陥っている。
 嗚呼、眩暈がしてきた。水分って大切だな。人間の60%は水分でできているらしいぞ。水分補給はまめにな!
 
 俺はこめかみを擦り、「お茶」ようやく唇を動かすことに成功した。
 
 掠れた声で飲み物を欲求したものだから、誰かが慌てて自分のお茶であろうペットボトルを恵んでくれる。
 飲みかけだろうが構いやしない。飲んでしまって構わないと許可を貰ったから、各々ペットボトルを受け取り、それを飲み干して大きく一息。ああ美味い、緑茶の仄かな苦味が最高。

 落ち着きを取り戻した俺とキヨタは口を揃えて「マラソンだなんて最悪」、タコ沢は憮然と肩を竦めて「根性のねぇ発言」と悪態をついた。
 バッカ! 俺達、めっちゃ根性あるだろうよ! だってマラソンを完走したんだからな!


「だいったいタコ沢のせいでっ、マジもう制服が気持ち悪いィイイ! 走りにくかったしさ!」


 ここで元気を取り戻したキヨタが早速タコ沢にイチャモンを付け始めた。
 お前、やっと落ち着いてきたっつーのにそれかよ!

「俺は谷沢だぁあ! てか、チビ助、貴様は俺に感謝するべきだろうが! 俺様の咄嗟の機転が命を救ったんだぞごらぁあ!」

「俺っちの命を救ったのはケイさんだぁあ! お、おぉお俺っち、マジで水は不得意っ」


「それをなんっつーか教えてやる。カナヅチって言うんだよ。カナヅチビ助」

「な、なんだとっ、俺っちとヤんのかぁあ! 俺っちは水が不得意なだけなんだぁああ!」
 

 べしべしとタコ沢を空のペットボトルで叩くキヨタに、「ヤってやろうじゃねえか」タコ沢が空のペットボトルで応対。
 似非チャンバラを始める二人に俺は重々しく溜息をついた。お前等は小学生かよ、ほんと元気ねぇ。見習いたいくらいだぞ、その回復力の速さ。俺はまだへとへとだっつーのに。

「て、テメェ等なにしてるんだよ。やめろって」

 小学生染みた仲間割れを始めるもんだから、早々とヨウが止めに入った。
 よってチャンバラごっこは終わるものの「タコ沢のターコ!」「カナヅチビ助のカナヅチ」お互いに視線で火花を散らし、フンッとそっぽを向いてしまう。んでもって、「ケイさんっ!」兄貴は俺っちの味方ですよねっ、とキヨタが泣きついてきた。

 はいはい、お前の味方になってやるから縋ってくるなよ。俺もお前もびしょ濡れ男なんだから、気持ちが悪いだろ。光景も目に毒だろうし。




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あきゅろす。
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