XXX. あまりに純粋すぎるおもちゃ箱の中で 【あまりに純粋すぎるおもちゃ箱の中で】 (一人称/ふたりぼっちT) 入院している時の兄弟 異常を異常といとわない兄弟と益田刑事 益田刑事視点 × × × かれこれ幾多の事件に出くわしてきた俺だから、それなりに個性的な容疑者と出逢ってきた。 例えばそれが人に無頓着な無愛想な男だとか、金に煩いヒステリックな女だとか、宙をひたすら見つめて口を閉ざす老人だとか。 とにかく老若男女、個性も個性揃いな容疑者と出逢ってきた。 が、今回の容疑者はまたはじめて見る容疑者のタイプだ。 どんなタイプか。 そうだな、愛が強すぎる兄弟と称しておこう。 俺は今、とある事件を抱えていた。 なんてことないと言ったら被害者に失礼きわまりないが、犯人が既に割れてる解決寸前の時間を担当していた。 被害者の名前は下川芙美子。 焼死体で見つかった彼女は、自宅が火事になり、逃げ遅れたから亡くなった…、というわけじゃあない。 腹部の刃傷とガソリンを撒かれた痕跡から彼女は殺害されたと推測されている。いや断定されている。 殺害の容疑に掛かっているのは被害者の息子。 下川治樹(20)と下川那智(14)、この二人が犯人じゃないかと俺は睨んでいる。 何故ならこの二人には殺害する決定的な動機があるからだ。 第一被害者の素性がとんでねぇ。 近所の聞き込みで分かったことだが、下川芙美子は長年にわたって実子を虐待していたらしい。 とっかえひっかえしている恋人とストレス発散がてらに虐待していたそうで、昔からよく泣き叫ぶ声が家から聞こえていたとか。 通報するにも恋人が裏社会関係のような輩ばかりで、通報するにできなかったらしく、近所は見て見ぬ振りを通してきたらしい。 世知辛い世の中だ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |