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07-06


だったら強情な奴だと意地悪い笑みを浮かべて、大雅先輩はじゃあなっと手を挙げて自分の教室に戻って行く。

俺はといえば足を止めてポカンと彼の背中を見送る他術がない。大雅先輩の仰るとおり、俺、今すっげぇ動揺した。
 
それってやっぱ俺が先輩の彼氏だからなんだけど、それだけじゃない。

嫌だって思った。
鈴理先輩と大雅先輩がキスした、その事実が嫌だって思っちまったんだ。


先輩が俺とファーストだっていう事実に安堵していた分、ショックが大きくて。


あれ、俺、鈴理先輩のこと、困った攻め攻め女だって思ってるけど、思っている以上に好きなんじゃ。

キスだって拒むことは無くなったし(TPOは考えて欲しいけど)、男の自尊心が傷付けられつつも、先輩が男ポジションで喜んでくれるならって、渋々女ポジションを譲ってるし。

セックスはごめんなさいだけど、でもいつも傍にいたいって思ってるし。

 
寂しそうな先輩を見たら尚更、支えになりたいって思う俺がいる。
 
純粋に先輩の傍にいたいって思う俺が、俺が、おれがいる。


俺は、おれは彼女のことが。


―――…そっか、俺、先輩が好きなんだ。もうとっくに落ちてたんだ。

お得意の逃げで向き合う事を拒んでいたけど、俺はとっくに落ち掛けている、じゃなくて、落ちているんだ。鈴理先輩に。

 
自覚しちまえば、案外答えはスンナリと出てくる。

アジくんに助言されて付き合いは始めた俺等だけど、今は、俺の意思で先輩とちゃんとお付き合いしたい。


ああっ、どうしよう、俺、好きなんだ。

大雅先輩に発破かけられて気付いた。俺、鈴理先輩が好きなんだ。本気で恋しちまってるんだ。


佇む俺はひとりで頬を紅潮させながら、人気の無い廊下まで逃げることにした。

今はこの顔、誰にも見られたくない。
フライト兄弟には特に見られたくないぞ、この顔。
 

(先輩が好きって改めて自覚すると、なんか小っ恥ずかしいな)


廊下を駆けながら、俺は自分の気持ちを相手に伝えるかどうか考え始める。
 
彼女をハッキリ好きって自覚した今、俺はいつまでも俺の気持ちを待たせている彼女に想いを伝えなければいけないだろう。

でも、まだ、まだ俺には欠けている気がする。
彼女を告白するに当たっての、感情がまだ欠けている気がする。想いが弱いっていう表現もおかしいけど、まだ何か足りないんだ。


だけどナニが足りないんだろう? グルグルと思案を巡らせ、俺はひとつの結論に達する。



「観覧車…、先輩好きって言ってたな。俺も一緒に乗りたいな」
 
 
 
鈴理先輩が観覧車の絶景を目にした時、彼女はどんな風に喜んでいるんだろう? 大雅先輩は何度も見ているらしいけど、俺は一度も目にしたことが無い。なんか損してる気分。

高所恐怖症さえ治しちまえば、俺だって…、俺だって。
 
 
「やるっきゃないか」


いつまでもこいつと連れ添うわけにもいかないもんな。

俺は本気モードになって握り拳を作った。そうと決まれば、早速原因探しだ。



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