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腐っても、諦めるな。


  
 * *
 
 
 ラージャの体調不良は、夕方過ぎから本格的に酷くなった。
 自室でラージャの看病をしていたアルスは、オリアンの言葉を思い出していた。ある意味、あれは当たっていたのかもしれない。
 だって、ラージャ、体調不良を起こしているし、下痢も……もしかしたらするかもしれないし。あからさまラージャは辛そうなのだが、アルスの前では平然とした態度を装ってくる。

『俺ちゃま、平気だ! だから薬は要らないぜ?』
「そんな辛そうな顔して何言ってるんだよ」
『……これは、パンツ萌え切れだぜ?萌え切れ。アルス!パンツ!』
「いーから寝てろ」
 
 軽く溜息をついてアルスが、ラージャの様子を見守る。
 うううっ……パンツ……と、呟いているラージャだが、かなり辛そうだ。

 しまいには、何も言葉を発しなくなってしまった。
 黙ってしまうラージャに、アルスが「大丈夫か?」と声を掛ける。
 
「おい、ラージャ?」
『……アルス……みずプリーズ』
「水か? 分かった」
 
 立ち上がって、アルスが水差しから小さな木の器に水を入れて持ってくる。
 ラージャの前に置けば、ラージャが水を飲もうと顔を上げた。
 ヨロヨロと水を飲もうとして、ラージャは顔を近付けたのだが、身体を支えきれず顔から器に突っ込んでしまう。顔を起こせず、ジタバタとラージャが器の中でもがいている。


 アルスが驚いて、ラージャの身体を起こして助けてやれば、ラージャが叫んだ。


『ギャアアア! アルスっ、手、手の力緩めろー!』
「そ、そんなに力入れてねぇって」
『クッソー。俺ちゃま、超カッコ悪いぜ。水飲もうとして顔からダイブなんてよぉ! しかも、お、溺れそうに……ハッズー!』
「そんなに悪いのかよ。身体」
『アルス。ここは笑うところだぜ? 今俺ちゃま、小さな器で溺れそうになったんだぜ? ノリ悪い!』
「何のノリだよ」
 
 小さく吐息をついて、アルスが器を少し傾け、ラージャが飲みやすいようにしてやる。
 ラージャはノリ悪いとブツブツ文句言いながら、水を飲み始めた。


 そんなラージャを見ていたアルスが、また小さく溜息をつく。


「俺、才能ないのかなぁ」
『はあ? 急に何言ってるんだ?』

「だってよ。【マナ】、1回も送れてねぇんだぜ? もし俺が【マナ】をお前に送れたら、お前、今日みたいなことせずに済んだだろ? 俺が、ちゃんと【マナ】使えれば、お前の身体にこんなこと……ごめん」

『何だよー。お前らしくないぞ?アルス。落ち込むお前ってキモらす!』
「……悪かったな」
 

 声も覇気がない。
 それなりに落ち込んでいるようだ。


 そりゃ、今日、ベルトルが言ったことを全て真に受けているワケではないだろう。それでも、気にしている事を言われたら、やっぱり人は落ち込む。アルスだって例外ではない。
 クジ引きで決まった職業だとは言え、アルスは『ドラゴン使い』になると意気込んでいたのだ。ラージャはアルスが努力していることを知っている為、呆れて大きく溜息をついた。





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