015
「なーんてことザマス! これは有るまじきことザマスよ!」
金切り声を出して喚き散らすのは、エミシュ教頭だった。
ザマス口調と神経質な性格の持ち主で、ある意味かなり有名な教頭だった。
キラリと眼鏡のレンズを光らせながら、エミシュ教頭は「学校の秩序を乱すつもりでございますか!」と捲くし立てる。
「もーしわけございません! 僕がしっかりと2人を見ていなかったせいでッ!」
「謝って済む問題じゃないザマス! しかも何ザマスか?! 授業中に、学校中を走り回って騒動を起こすなんて!」
「仰るとおりでございますっ!」
「しかも校長をこのような哀れなお姿にっ!」
「返すお言葉もございませんっ」
ギュナッシュは深々と頭を下げて、ペコペコと謝る。
喧しいエミシュ教頭の言葉を遮るように校長が口を開いた。
「教頭先生。いいよ。いいよ。僕は気にしてないから。少し意識が天国に行きかけたけど生きてるし。お説教だけで許すよ。怪我人も僕以外出てないみたいだし」
「ッ〜〜〜申し訳ございません!」
「しかし! ボング校長! 何もお咎めナシというのはッ」
「子供は元気じゃないとねぇ」
「そんな勿体無いお言葉をっ!」
ギュナッシュが校長に平謝り。
黒こげになっている校長は、ハンカチで額を拭きながら「いいよ。いいよ」と笑っている。
しかしギュナッシュはベルトルとアルスの頭を下げさせ、ただ只管謝り続けた。校長は「元気があっていいよ」と笑っているが、こげた姿で言われたら罪悪感が強まる一方だ。
校長は朗らかな表情を浮かべながら一つ注意してきた。
「元気なのはいいけど、授業妨害だけは頂けないねぇ。他の皆さんにご迷惑をお掛けしたらダメでしょ?」
「仰るとおりですっ!」
「今後、授業妨害だけは避けるように」
「はい! 本当の本当の本当に申し訳ございませんっ! 2人とも!謝って!」
「す、すみませんでした」
「……申し訳ございません」
2人が謝れば、校長が「ウン。許す」と軽い言葉を返す。
エミシュ教頭は「甘いザマス!」と喚いていたが、校長はこれ以上責めるつもりは無いと笑っていた。なんて寛大な校長なのだろうか! エミシュ教頭と違って! (本人に言ったら殺されるだろう)
校長室を出る時まで、ギュナッシュは校長に頭を下げ続けた。勿論、アルス達の頭を無理やり下げて。
頭を下げながら、校長室を出たギュナッシュは大きく溜息をついて2人の頭から手を離す。
2人は首が痛かったと、首を押えていた。
ラージャとジランダがそれぞれ主人の肩に乗って、お咎めを喰らわなかったことに安堵する。校長からお咎めなんて喰らおうものなら、退学にだってなり兼ねない。
安堵しているドラゴン2匹に対し、ギュナッシュは2人を見据えた。2人ともギュナッシュから視線を逸らす。
これから、自分達に待っているのは、もう予測しなくても分かっていた。
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