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014


  

『ベルトルさまのご迷惑はお掛けしませんので大丈夫です。窃盗なんて物騒ですね』

「………。ああ」
 

 相槌を打つベルトルだが、しかめっ面は変わらず。
 よほど信用されていないようだ。確かに、今の自分ならば信用されないかもしれない。現に迷惑ばかり掛けているし。愛想笑いで返すが、ジランダの心中に掛かる雲は分厚くなるばかりだった。

(違う、ただ一言…、言ってやりたかったんだ。気を付けろと)
  
 ベルトルは険しい顔を作ったまま、表情を崩さず、組む腕を強くする。
 彼等と同じように憂慮を抱いているのだと、一言告げたかっただけなのだ。自分の不器用さにベルトルは舌を鳴らしたくなった。
 

「お前って意外とヘタレー」


 言いたいことも言えないのかとアルスは鼻を鳴らしたため、空気に亀裂が走る。
 「三流ッ」ベルトルは喧嘩を売ってるのかとばかりにフォルックを挟んで隣を睨んだ。本当のことじゃないか、口端を引っ張り、べろべろべー。アルスは舌を出して挑発。


 そのため、


「三流っ、今日の今日こそ地獄を見たいようだなッ」

 ガタン―ッ、椅子を引いてベルトルが机上を叩き、

「やれるもんならやってみろ! 返り討ちにしてやる、この三・流・くん」
 
 ガタン―ッ、アルスも腰を上げて喧嘩を買う。 
 普段であれば、アルスが熱くなり、ベルトルが静かに喧嘩を買うパターンなのだが、今回は逆。ベルトルが沸騰したヤカンのように熱くなり、アルスが余裕綽々で喧嘩を買っている。


「やめなさい!」


 ギュナッシュに注意されたため、二人は荒々しく席について腕を組み、フンッと鼻を鳴らしてそっぽを向き合う。
 悔しさを噛み締め、やきもきしているベルトルに対し、アルスは意地の悪い笑みを浮かべ、アイロニー帯びた言の葉をぶつける。


「ベルトル、俺は本気だからな。無理なら俺が貰う。お前には勿体無いしなぁー。せいぜい。虎視眈々と狙わせてもらいますのでヨロシク。優等生の貴方サマのお手並み、とくとご拝見させてもらいますネ」 


 彼にしか分からない台詞をぶつけ、アルスは笑声を漏らした。
 「ふざけるな」何の話か分からないとばかりにベルトルは毒づくが、アルスはあっそうの一言で済ませてしまう。フォルックとナーガはハラハラと二人のやり取りを見つめ、ギュナッシュは大きく溜息、ジランダはキョトン顔。ラージャだけが面白おかしそうに笑っていた。

 つくづくお節介焼きだと小さな小さな声で呟き、アルスに耳打ち。


『お前ってほんと大根役者! 超悪役似合わねぇって』


 わざとらしい発破に、腹が捩れそうだとラージャは始終笑いを押し殺していた。パートナーだからこそ分かる猿芝居だった。
 



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あきゅろす。
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